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第6回 自律型人材をつくるチームマネジメント(1)~人材育成、マネジメント

PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)などの普及で、科学的・定量的なマネジメントがかなり浸透してきました。しかし、メンバーのモチベーションやモラール(士気)などに関しては、まだまだ問題が多いという話をよく聞きます。高い目標を自らに課し、困難に対して自発的に動き出し、問題解決を推進する自律型人材がなかなか育たないというのが悩みのようなのです。では、どうやったらそのような人材が育成できるようになるのでしょうか。

* 本文中の登場人物・企業名はすべて架空のものです。


第6回 自律型人材をつくるチームマネジメント(1)~人材育成、マネジメント


責任の押し付け合いはなくなったのだが

埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業・YMC電子工業(仮名、以下YMC)。美咲いずみは、同社のITコンサルタントとして定期的に訪問をしている。週1回のシステム部の部内会議に参加し、その後システム部門の持つ課題について山田昭(仮名)CIOと打ち合わせるという形態だ。

YMCのシステム部員はパートナー企業の社員も含めて4名である。開発・運用・インフラのすべてに責任を持つ山田CIOの片腕、真鍋芳雄(仮名)課長。主にシステム企画と外注管理を担当する木村真奈美(仮名)主任。社内外の運用窓口である宮下一郎(仮名)。大手システムインテグレーター伊達システムズからの常駐要員である高橋秀人(仮名)。

少人数のチームであることと、YMCの風通しのよい社風もあって、言いたいことが言い合える和気あいあいとした風土ができ上がっている。しかし、その風土がトラブルが発生すると悪い方向に作用した。責任の押し付け合いをするという傾向があったのだ。それが、ITをサービスとして捉えよう(第3回~第5回参照)といういずみの提案を受けて、全員が一つの方向を見るようになり、大いに改善されたのだった。

ところが、チームの問題はそれだけではなかったようだ。

それは誰の仕事?

問題は、山田CIOが新しいシステム導入プロジェクトを開始することを宣言したあとに顕在化した。

「現在使っている基幹業務パッケージ ヤマトERP(仮名)が来年4月にバージョンアップされるのはみんな知っているね。単純にバージョンアップしてもいいのだが、別のパッケージに乗り換えるほうがいいかもしれない。そこで選定のための調査とRFP(提案依頼書)を書くためのプロジェクトを発足することにした。」

真鍋課長が質問する。「ヤマトERPに何か不満でもあるのですか?」

「いや。格別の不満はない。ただ、来年度に予定されている東南アジア進出において、本当にヤマトERPでいいのか、もしかしたらほかにいいパッケージがあるではないかという不安は感じているんだ。そこをきちっと見極めたい。」

「そうすると伊達システムズはどうなるんでしょう?」と高橋が不安そうに聞く。伊達システムズはヤマトERPに関するノウハウが豊富で、それが理由でYMCとの取り引きが始まったからだ。

「御社との取り引きをやめるという話はありませんよ。既に御社はヤマトERPのエキスパートというよりも、YMCの業務に精通している会社だと我々は捉えています。ただ、導入にあたっては別のパートナーが関わってくる可能性はあります。実は、御社の伊達社長には打診済みで了解ももらっています。」
高橋は安堵したようだが、別の不安も生まれたような顔をした。

「で、そのプロジェクトのメンバーは誰になるのでしょう?」と木村主任が質問した。全員、今の業務で忙しく、そんな仕事は無理とのニュアンスが込められた口調だ。

「全員で手分けしてやる。ただし、人手が足りないのは分かっているので、新人を一人配属することにした。樋口優子さんという女性だ。作業的なことは彼女でできるように育成しながら、うまく進めて欲しい。」

「ええっ~。」宮下が思わず声を上げる。山田CIOが目を向けると「あ、いえ、がんばります!」と返事をする。

「とりあえず、私が進め方のたたき台を作ります。」と真鍋課長が引き取ったことで収まったが、会議の空気はとても重くなったのだった。

マネジメントの大問題

「なかなか恥ずかしいところを見せてしまったね。まあ、美咲さんに対して今更恥ずかしがることもないか。」と言いながらも、山田CIOはやはり恥ずかしいようだった。

「いいえ。恥ずかしく思う必要はないと思います。御社のシステム部門は、すごくいいチームだと思っています。」これは、いずみの本音だ。

会議室には、現在山田CIOといずみだけ。定例会議後の打ち合わせに入ったのだった。

「そう言ってもらえると救われるが…。」

「チームが自律的に動き出さないことを気にされているのだと思いますが、それができているチームはほとんどないんですよ。」

「自律的なチームというと、どういう定義なんだろうか。」

「人によって違いますが、私が思うには、高い目標をかかげ、役割分担の隙間があれば率先して手を挙げ、問題解決を喜びとするような人が集まっているチームでしょうか。」

「まさに、そこなんだよね。与えた仕事は一生懸命にやってくれる。創意工夫もある。でも、あのように新しいことを始めようとすると、尻込みをする人が多くなる。保守的と言ったらいいのかな。」

「人間がある程度保守的なのはしかたがないと思います。毎日毎日新しいやり方をしないといけないなら仕事は進みません。」

「たしかにそうだね。でも、毎日毎日を求めているわけではないんだがね。」

「この10年ぐらい、PMBOKなどの普及もあって、マネジメントはかなり科学的で定量的になりました。以前のように勘と経験と度胸に頼ったマネジメントはなりをひそめ、データに基づいた早め早めの対策が打てるようになったと思います。標準化も進み、アウトソーシングもしやすくなりました。でも、人間の問題は、まだまだ解決されていないというのが私の考えです。そして、これは残された大問題だと思うのです。」

「僕もそれは感じるよ。でも、どうしたらメンバーたちは自律的に新しいことに取り組むようになるんだろうか?」

不安や不信感が自律的な行動を阻害する

いずみは少し話の方向を変えた。「その前に、なぜ自律的な取り組みができないかを考えてみませんか?」

山田CIOは、先ほどの会議の様子を思い出しながら言った。「真鍋課長は、現行のシステムを変えること、つまり変化を嫌がったようだね。高橋さんは、自分というか自社の立場が脅かされるのを恐れていたみたいだ。それと新しいパートナーが別にはいったときに揉め事が起こらないかも不安だったのかもしれない。木村主任は仕事が増えることが嫌みたいだね。あと、宮下くんは新人育成を押し付けられると思ったんじゃないかな。」

「となると、不安や不信感が自律的に動けない原因なのかもしれませんね。」

「そうか。となると、もしかしたら僕が悪いのかもしれないね。」

いずみはそれには直接こたえず、話を進めた。「実は、私の知人に自律的な営業チームをつくるためのコンサルティングをしている篠田(仮名)さんという方がいます。営業とシステム部門では役割は大きく違いますが、チームで動くほうが生産性が高まるという本質は変わりません。一つそのやり方を参考にしながら、どうやったらシステム部門が自律的なチームになるかを一緒に考えてみませんか?」

「ちなみに篠田さんは、どんな実績を上げているの?」

「営業チームというと、いつもたくさん売っている少数の人と、たまに売れる多数の人というイメージがありますよね。実際そういうチームが多いそうです。それを全員がコンスタントに売れるようにするためのマネジメントの仕組みを作るんです。20社以上関わって、100%成功していると言っていました。」
「それはすごいね。ぜひ参考にしたいな。やりましょう!」

まとめ

  • 高い目標をかかげ、役割分担の隙間があれば率先して手を挙げ、問題解決を喜びとするような自律的な人材が集まっているチームにしたいと多くのマネージャーが願っているが、そのようなチームはほとんどない
  • メンバーが自律的に動き出さない原因は、不安や不信感にある

いずみの目

マネジメントの問題は、最終的には人間の問題だと私は思います。しかし、それ以前にデータに基づいた科学的・定量的なマネジメントとインフラができていないと、それ以上に難しい人間問題に取り組むのは難しいのではないでしょうか。

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

* この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
  日立システムズの公式見解を示すものではありません。
* 資料の、無断引用・転載・改ざん・配布および、そのままでの教材としての利用は、すべて禁止します。

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