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第12回 安全・確実なスマートデバイスの導入(1)~ファシリテーション

タブレット端末やスマートフォンなどスマートデバイスが急速に普及し、企業での成功事例が多数出てきました。しかしながら、セキュリティなどの面で課題があるのも事実ですし、またせっかく導入してもあまり使われていない企業もあるようです。導入して効果を上げている企業での取り組みはどのようなものか、今回から3回に渡って考えていきたいと思います。

* 本文中の登場人物・企業名はすべて架空のものです。


第12回 安全・確実なスマートデバイスの導入(1)~ファシリテーション


導入にあたってのファシリテーション

埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業、YMC電子工業(仮名、以下YMC)。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみ(仮名)は、週はじめのシステム部門の定例ミーティングに参加した後、同社の山田昭(仮名)CIO兼システム部長の相談を受けるという形態のコンサルティングをしている。

定例ミーティングでは、定型的な報告のあと、YMC全体あるいはシステム部の課題についてフリーディスカッションをしている。今回のテーマは「スマートデバイスの利活用」であった。

「また漠然としたテーマですね」と、山田CIOが片腕として頼りにしている真鍋勇課長(仮名)が笑いながら言うのだが、山田CIOはどちらかというと浮かない顔を崩さない。

「それが、社長からの特命なんだ。同業他社との会合でZ社の社長が自社のスマートデバイス活用を自慢したみたいでね……」と山田CIOは嘆く。Z社の社長とYMCの社長とは大学の同窓生で本当は仲が良いのだが、対抗意識も強い。

フリーディスカッションのファシリテーターは順番に務めることになっている。今回は、若手の宮下浩二(仮名)が担当だ。彼が困ったようにいずみに尋ねる。

「美咲さん。こういう漠然としたテーマのときには、どうやって話を進めるのがいいんでしょうか?」

「まずは、仮説を立てることです 」といずみは言い切った。「どんなニーズや目的があり得るのか、そこを最初に考えみたらいかがでしょうか?」

ノートPCではなぜいけないのか?

宮下がいずみに言われたとおりに始めようとすると、主任の木村美佐子(仮名)が手を挙げた。

「その前に、なぜノートPCではダメなのでしょうか? YMCでは営業の便宜を図って、Wi-Fiから社内WANにセキュアにアクセスできる環境を作っています。それで十分なような気もしますが」

山田CIOが答える。「僕も社長に同じことを聞いてみたんだ。そうしたら、社長もZ社の社長に同じことを聞いて、馬鹿にされたらしいんだよ。」

全員が興味津々で山田の話の続きを待つ。

「Z社の社長は、これ見よがしにミニタブレットを取り出して、こう言ったらしい。『操作性が違うんだよ。見るということに特化したら、スマートデバイスが一番。たとえば親指と人差し指をこうやると、ほら画面が拡大されるだろう? これがいいんだよ。それから、こうやって同じ画面を見ていると親密さが増すだろう? おかげでうちの営業がどれだけ成績を上げているか。まあ、山田君には新し過ぎて、付いてこられないかもしれないな』と」。

この「山田君」は山田昭CIOのことではない。彼の叔父にあたるYMCの山田勝社長(仮名)のことである。全員の脳裏に山田社長のムッとした顔が浮かんだ。

一瞬場が凍りついたが、それを溶かすように真鍋課長が意見を言う。「となると、仮説としては『営業が客先で打ち合わせに使う』ということでいいんじゃないでしょうか?」

ファシリテーションの流れ

宮下が「じゃあ、それで…」と言いかけた瞬間、いずみが口をはさんだ。

「宮下さん。ファシリテーションの最初の段階では、自由にアイデアを発散させることが大事です。ほかの方の意見も聞いてみましょう」

すると山田が「美咲さん。ファシリテーションの標準的な流れがあるのなら、簡単に教えてくれないかな」と言う。

「わかりました。ただし、ファシリテーション講座を本格的にはじめたら半日ぐらいかかると思います。本当にさわりだけですよ」といずみは言い、ホワイトボードに簡単な図を書いた。青い四角はファシリテーションのフェーズ、赤い四角はそのフェーズで特に必要とされるファシリテーターのスキルである。

図 ファシリテーションの流れ

まずは、討論のテーマや目的の「共有」から始まる。ファシリテーターの役割は「場のデザイン」、すなわち討論の雰囲気づくりである。今回は部内会議なので必要なかったが、あまりなじみのないメンバーで討論する場合は、最初に「アイスブレーク」と呼ばれる場を和ませるためのクイズやゲームなどをすることもある。

次に、問題解決のためにアイデアを「発散」させる。ブレインストーミング(ブレスト)などの方法が使われることが多い。ファシリテーターの役割は、「対人関係」を調整することだ。たとえばブレストのルールとして、他人の意見を否定しないというものがあるが、これは注意していないと破られやすいルールである。そしてルールが破られてしまうと、対人関係の問題に発展してしまうことがある。ファシリテーターは多くの意見を出してもらうために、互いが尊重しあえるようなムードを保持しなければならない。

いつまでも発散していたら、まとまらない。次に必要なのはアイデアを「収束」していくことである。出てきた多数のアイデアを図解その他のツール類(QC7つ道具、マインドマップなど)を活用して、全員が理解できるように「構造化」(見える化)して示す。これにより、参加者はどのような意見が出てきたかを理解し、落とし所を探し始める。

そして最後に、課題解決のためにどのような行動をするのか「決定」することである。このために必要なのが「合意形成」のスキルである。ファシリテーションにおいては全会一致が望ましい。意見が割れるようであれば無理に決定せず、次回までの「宿題」を残してもよいが、その宿題の内容と担当者については全会一致で合意しなければならない。このように次回に持ち越されるケースもあるので、矢印が最初の「共有」のフェーズにつながっているのである。

導入目的を確認する

宮下はいずみの話に納得し、今後の進め方もある程度イメージできたようだ。

「では、ユーザー部門でのスマートデバイスのニーズについて自由な意見をお願いします。樋口さん、どうでしょう?」

樋口優子(仮名)は、次期ERPの検討のための要員としてシステム部に配属された新人である。

「そうですねぇ。社内会議のペーパーレス化というのもあるんじゃないでしょうか」

宮下は、発言をホワイトボードに書き上げていく。「発散」と同時に「収束」のための「構造化」を同時に行っているのである。(なかなかの理解力だわ)といずみは思った。

同じような意見は、宮下がまとめた結果、以下の6つがスマートデバイス導入の目的だろうということになった。

  • 客先でのプレゼンテーション
  • 客先での資料提示
  • 社内会議のペーパーレス化
  • 社外からの費用精算
  • 社外からのメール利用
  • 社内アプリケーションの利用(ワークフロー、スケジュール、SFA、CRM、CADなど)

真鍋課長が嘆き声で言う。「これは、どれもありそうだ。優先順位が付けられないなあ」

スモール・スタート

宮下がいずみに助け舟を求めた。「真鍋の言うとおりだと思います。こういうときには、どうやって合意形成したらいいんでしょうか?」

「宮下さんの考えはいかがですか?」

いずみはこういうときに安易に答えを言わないようにしている。師匠の亀田金太郎に教わったことだ。

「ここで決めてしまわずに、全員が合意できる何らかの案が出せればいいと思うのですが…」

宮下は考え込む。

システム運用のアウトソーシング先である伊達システムズから常駐している高橋正弘(仮名)が手を挙げた。

「以前、“Small Start, Quick Win”という話があったじゃないですか(第4回参照)。パイロット部門を選定して、その部門のニーズでまずは始めてみたらどうですかね?」

「それはいい意見ですね。」と真鍋課長が賛同する。

“Small Start, Quick Win”とは、「小さく始めて、早く成果を出す」ということである。社内改革などでいきなり全体を変えようとしても、なかなかうまくいかない。成果が出る前に業務が大きく変わってしまい、現場が抵抗するからだ。

結局この案が採用され、山田CIOがパイロット部門を選定。その部門に本件に関する責任者を決めるようにお願いし、次回の定例会議に参加してもらうことに決まったのであった。

まとめ

  • 漠然としたテーマでは、最初に仮説を立てることが重要である
  • 「見る」ということに特化するのであれば、ノートPCよりもスマートデバイスのほうが効率的である
  • ファシリテーションには、「共有」「発散」「収束」「決定」の4つのフェーズがある
  • 目的等が多数あり、優先順位が決められないときは、「小さく始め早い成果を求め」て進めるのがよい

いずみの目

スマートデバイスの導入は、「便利だから」と漠然と進めないほうがいいようです。セキュリティなどの課題があるのでインフラ選びが重要になりますが、安易にインフラを決めてしまって目的に合わなかった場合には、1からやり直しということになりかねないからです。自信がない場合には、構築経験が豊富な会社のアドバイスを受けることも選択肢の1つだと思います。

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

* この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
  日立システムズの公式見解を示すものではありません。
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