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第33回 AI(人工知能)の現状と近い将来(1)~AIの歴史

数年前から、AI(Artificial Intelligence、人工知能)が一般の人の話題にも上るようになり、ブームといえる状況になりました。しかし、なぜ突然ブームになったのか、現状では何ができるのかということが明確にいえる人はあまりいないようです。
そこで今回から3回にわたって、AIの歴史、ここ数年間の動向、そして近い将来を中心にAIの未来像について解説していきます。今回はAIの歴史です。


第33回 AI(人工知能)の現状と近い将来(1)~AIの歴史


AIについて知りたいとの要望

ITコンサルタントの美咲いずみ(仮名)は、東京都港区にあるスマイルソフト(仮名)の神谷隆介(仮名)社長から、月1回の頻度で、経営のためのIT活用の相談を受けている。スマイルソフトは、中堅企業向けのCRM(顧客管理システム)KIZUNA(仮称)の開発・販売で急成長した、IPO準備中の新興企業だ。

相談したいテーマは神谷社長から事前に送ることになっている。今回は「AIについて」だった。

そもそもAIとは何なのか?

スマイルソフトのフロアはウォーターフロントにある、30階建てのオフィスビルの最上階だ。ガラス張りの開放的な会議室から見える景色は、晴れた日には絶景といっていい。
いずみが窓際で景色に見とれていると、ドアが開く音がして、神谷社長が入ってきた。神谷は挨拶もそこそこにこう切り出す。

「今回も抽象的なテーマで申し訳ありません。AIの情報もここ数年で一気に増えて、どこから調べていけばいいのか分からなくなって。ただ、どうして急にAIがブームになったのか。現状の応用としてはどういうものがあるのか。そして将来どうなっていくのか。このあたりはぜひ知りたいと思っています」

「分かりました。ご相談内容は今いわれたようなことだろうと思い、一とおり調べてまいりました。ところで、神谷社長は、そもそもAIとは何だと思いますか?」

「『人工知能』というからには、『人間の脳と同等あるいはそれ以上の働きをする機械』だと思うのですが……」

「おっしゃっていることは間違いだと思いませんが、そもそも『知能』や『知性』がうまく定義できないことと、AI全般を1人で研究するのはとても無理なこともあって、定義は立場や人によってまちまちです。
例えば、成果物に焦点をあてて『人工的に作られた知能』という定義をする人もいれば、『それを作るための知能の研究も含める』とする人もいます。その知能のレベルも『人間を超えたもの』とする人もいれば、『コンピューター上に人間が設計・製造するものならすべて含めていい』とする人もいます。特定の用途でもよしとする人と、人間のように汎用の知能でないといけないとする人もいます」

「ふーむ。たしかにまちまちですね。でも定義ができないなら、それについて話をするのは不可能では?」

「そうですが、何を話題にしているのかが分かる程度の最大公約数的な定義づけは可能でしょう。
例えば『情報通信白書』では、『本書では人工知能(AI)について特定の定義を置かず、人工知能(AI)を「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と一般的に説明する』としています。私たちもこれを念頭に議論することにしましょう」

Google、Watson、alpha GOがきっかけ

神谷社長が質問する。「ところで、なぜ突然のようにAIがブームになったのでしょうか?」

「2012年ぐらいから徐々に火が付き、日本では2015年後半ぐらいからブームになったと理解しています。それには2つの大きなきっかけがあったと思います」

「そのきっかけとは?」

「最初のきっかけは、Googleによるネコ画像の認識です。これが2012年。次はIBMのWatsonが、日本市場への本格進出のためにソフトバンクと提携したことでしょう。こちらが2015年です。ただし、これはビジネスのフィールドでのブームの始まりで、一般の人がこれほど関心を持つようになったのは2016年の alpha GO(アルファ碁)の勝利ではないでしょうか」

「なるほど。確かに私もWatsonで『AIが来ているな』と知り、alpha GOで『これは本当に侮れない』という衝撃を受けました」

現在は3回目のブーム

「Googleの画像認識やWatson、alpha GOについては後ほどまたお話ししましょう。その前にAIの歴史について、ごく簡単に触れたいと思います。AI研究史では、現在のブームは3回目といわれています」

1回目のブームは、1950年代後半から1970年代前半にかけてであった。コンピューターによる推論や探索が研究され、迷路を解いたり、簡単な定理の証明ができたりするようになり、多くの研究者がAIの研究に取り組み始めた。
しかしコンピューターの性能が現在よりずっと低かったため限定的な用途に限られてしまったことと、いくつかの難易度の高い原理的な問題が解決されず、1974年までに急速に下火になってしまった。

2回目のブームは、1980年代に到来する。AIの一形態であるエキスパートシステムが世界中の企業で大流行したのである。エキスパートシステムは特定の専門分野に限った問題解決を図ろうとするもので、人工知能の原理的な問題を回避して、実用性を追求するものであった。日本ではこのブームによって、政府主導の「第五世代コンピュータ」プロジェクトが発足した。
だが、当時はコンピューターが自力で情報収集して蓄積することができなかったため、必要な情報をすべて人間が入力する必要があり、適用分野が極めて限られたものになってしまった。そのため、1995年頃以降は完全に下火になってしまう。

「3回目のブームは、私の感覚では先ほども述べたように2012年ぐらいからと思いますが、人によっては2000年代からという人もいます。ただ、ベースとなっている技術はかなり昔からあります。機械学習とその一形態であるディープラーニング(深層学習)がその技術ですが、機械学習については1950年代から初歩的なものはありましたし、ディープラーニングもアイデアだけは1980年頃から存在します。これらが現実にめざましい成果を出し始めたのが2012年ぐらいからで、それから一般の人に知られるような大ブームになったといっていいでしょう」

AIかどうかの判定法

「ところで、AIかどうかの判定というのはどうしているのでしょうか?」と神谷が尋ねる。

「これは、AIの定義自体がはっきりしないので、そもそも判定はできないと私は考えます。ただ、アラン・チューリングというイギリスの数学者でコンピューター学者が1950年に『ある機械がAIであるかどうか(知的であるかどうか)』についての論文を書いています。
この論文によって、AIかどうかを判定する方法をチューリング・テストといいます」

「私もコンピューター技術者の端くれですので、チューリング・マシン(コンピューターを数学的に議論するための仮想的な機械。情報処理試験でよく出題される)は知っています。同じ人ですか?」

「そうです。そちらはチューリングの1936年の論文に基づくものです。
さて、チューリング・テストですが、やり方は簡単です。判定者の向こうに人間と機械(コンピューター)がいます。判定者からは相手は見えず、会話はテキストだけで行います。音声だと人間か機械かすぐ分かるからです。
この条件で会話をして、判定者の多くが人間か機械かを見分けられなければ、機械が知的だとみなすのです」

「『多く』では曖昧だと思いますが……」

「はい。基準はありまして、30%とされています」

チャットボットはまだAIとはいえないが……

神谷は少し驚いた様子でいう。

「それは、少ないですね。スマホのコンシェルジュ(Sili、OK Google!など)は音声なので機械と分かりますが、いっていることだけなら人間が向こうにいると思う人がもっといそうです」

「それが、チューリング・テストに合格するのはなかなか難しくて、2014年にロシアのスーパーコンピューターが『13歳の少年』の設定で合格(判定者の33%が人間と判断)したのが世界初なのです。
ですが、これもAI研究者からは批判を浴びていて、合格でなくなるかもしれません。このあたり、あとで説明しようと思っていますが、『強いAI』と『弱いAI』という議論もあり、これは『強いAI』とはいえないから不合格だという意見が強いようです」

「そうなんですね。それで思い出しましたが、チャットボット(メッセンジャーやチャットアプリ上で人間と会話する感覚で情報提供やコールセンター業務などを行うサービス)ってあるじゃないですか。あれではチューリング・テストに合格しないんですか?」

「はい。チューリング・テストに合格したチャットボットというのは聞かないですね。会話は自然ですが、回答できる範囲が狭いからでしょう。さまざまな質問をしていくと、普通の人間なら答えられるような質問に答えられないので、ボロが出るということです。
実際コールセンター業務では定型的な前処理をチャットボットにさせて、その後オペレーターが対応するという形が普通です。ですが、それだけでもオペレーターの手間はかなり省けるし、問い合わせした人の待ち時間もずいぶん減るので、コールセンターへのチャットボット導入はぜひお勧めしたいですね」

いずみは、切りがいいので、5分ほどのティーブレイクを提案した。

まとめ

  • そもそも『知能』や『知性』に対するはっきりとした定義がないことから、AIの定義も研究者の立場によってさまざまである。そこで現時点では、「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」ぐらいに捉えて議論するのがよい
  • 現在のAIブームは3度目で、Googleのネコ画像認識で世界的に、Watsonの日本市場進出などで日本でも注目されるようになった
  • ある機械がAIかどうかを判定するための方法をチューリング・テストという
  • チャットボットはチューリング・テストに合格するレベルには達していないが、応用例が多数あり、導入することによって顧客満足度向上と従業員効率化の両方を得られる可能性がある

いずみの目

本文に出てきた『強いAI』というのは、次々回で詳しく説明しますが、人間と同等以上の知能・知性を持つAIぐらいの意味で使われている言葉です。強いAIはまだ存在せず、研究に着手されてさえいないという状態です。
とはいえ、『弱いAI』も成果がたくさん出てきていて、本文で出てきたチャットボットもその1つです。
企業に問い合わせの電話をした人の多くが、つながるまで待たされた挙げ句、つながってからも調べることがあるたびに待たされることに不満を感じていると思います。貴社に問い合わせるお客さまもそうではないでしょうか? 心当たりがあるのなら、チャットボットの導入を検討されてはいかがでしょう。

対話型自動応答AIサービス「CAIWA Service Viii」

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

* この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
  日立システムズの公式見解を示すものではありません。
* 文章中に記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

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