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第35回 AI(人工知能)の現状と近い将来(3)~AIの将来

数年前から、AI(Artificial Intelligence、人工知能)が一般の人の話題にも上るようになり、ブームと言いえる状況になりました。しかし、なぜ突然ブームになったのか、現状では何ができるのかということが明確な人はあまりいないようです。
そこで前々回から3回にわたって、AIの歴史、ここ数年間の動向、そして近い将来を中心にAIの将来像について解説しています。今回はAIの将来像についてです。


第35回 AI(人工知能)の現状と近い将来(3)~AIの将来


前回の振り返り

ITコンサルタントの美咲いずみ(仮名)は、東京都港区にあるスマイルソフト(仮名)の神谷隆介(仮名)社長から、月1回の頻度で、経営のためのIT活用の相談を受けている。スマイルソフトは、中堅企業向けのCRM(顧客管理システム)パッケージソフトKIZUNA(仮称)の開発・販売で急成長した、IPO準備中の新興企業だ。

相談したいテーマは神谷社長から事前に送ることになっている。今回は「AIについて」だった。

いずみは、AIの定義や歴史、またAIの判定法(第33回ご参照)や、ここ数年のAIの動向など(第34回ご参照)を話したあといったん休憩し、話を再開した。

「シンギュラリティ」とは?

「神谷社長は、『シンギュラリティ』という言葉をご存知ですか?」といずみが問う。

「詳しく理解してはいませんが、『シンギュラリティ』――日本語にすると『技術的特異点』というものがやってくるというのは聞いたことがあります。時期は2045年頃で、そのときにはAIの知力が人間を超えるので制御することができなくなり、その先AIがどこまで進化するかは分かりません。人間の職業の多くがAIに奪われると危惧する人たちも多いようです」

「例えば5年前の『Googleの猫』以前に、現在のAIブームを予想する人はほとんどいませんでした。要するに、5年先も予測できない世の中になったということです。ですので28年後に、今、神谷社長がおっしゃったような未来が来ないとは、誰にも言えないと思います。
ただ元々の『シンギュラリティ』の話からはかなり一人歩きしているようです」といずみは指摘した。

「シンギュラリティ」とは、現在GoogleでAI開発の総指揮を執っている研究者で発明家でもあるレイ・カーツワイル氏が、2005年に発行した『The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology』(邦題:『シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき』、以下『シンギュラリティは近い』)で発表した概念である。

カーツワイル氏によれば、技術革新は線形ではなく指数関数的に拡大するものであり(これを「収穫加速の法則」と氏は呼ぶ)、その傾向が続くのであれば、2045年頃には「人間のテクノロジーと人間の知性が融合する」ことになり「人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明によって超越することができる」ようになるという(カギカッコ内は『シンギュラリティは近い』からの引用)。

「特異点に至れば、人類が長年悩まされてきた問題が解決され、想像力は格段に高まる。進化が授けてくれた知能は損なわれることなくさらに強化され、生物進化では避けられない根深い限界を乗り越えることになる」(『シンギュラリティは近い』より)。このあと、「特異点においては、破壊的な性向にまかせて行動する力も増幅されてしまう」(同書より)と自ら懸念を表明してはいるものの、カーツワイル氏は全般的には「シンギュラリティ」をポジティブなものと捉えている。

さらに、シンギュラリティは「AIが人間の知力を超える」ということではない(そのようなことは2029年頃に、「強いAI」(後述)の登場で起こるとカーツワイツ氏は予測している)。
バイオテクノロジーの進展によりナノテクノロジー革命(原子や分子レベルのスケールで物質を自在に制御する技術革新。2025頃に起こるとカーツワイル氏は予測)が起こり、それと並行して「強いAI」が登場する。これらが登場した結果、「人間のテクノロジーと人間の知性が融合」し「人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来たるべき未来」(『シンギュラリティは近い』)が「シンギュラリティ」だというのだ。

要するに、人間と機械が直接的につながり、人間の能力が「一兆倍の一兆倍」にも拡大し、永遠の生命も手に入れることができるといった、ある意味荒唐無稽なSFのような話である。そのため、そもそも収穫加速の法則自体に限界があるのではないかなどさまざまな批判もある。しかし、少なくともシンギュラリティによって職業が奪われるというようなことではなく、もっとスケールの大きな話であることは間違いない。

人間がAIに職を奪われるということはないのか?

「『シンギュラリティ』について誤解していたことは分かりました。ただ、人間の能力を超えるAIに職業を奪われる人が出てくるということはないのでしょうか?
僕が聞いた話では、10年から20年先には、日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能になるというのですが……」と神谷が心配そうに尋ねる。

「それは、野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究による結論ですね。これは私もあり得る話だと思っています」

 

「『あり得る』って、それで済ませられるような問題なのでしょうか?」

「何であろうと人が職を奪われるというのは問題だと思います。ただ、テクノロジーの進化で、それまで人間がやっていた仕事が機械化されるということは、歴史上ずっと起こってきたことではないでしょうか?

例えば、イギリスでは1811年から1817年にかけて、産業革命で機械に仕事を奪われることを恐れた手工業労働者達による「ラッダイト運動」と呼ばれる機械の打ち壊し運動が起こった。しかし実際には、産業革命によって新しい仕事が創出され、人類全体の富も増えた。

日本でもそれより前の元禄時代(1688年~1704年)に「千歯扱き(せんばこき)」という脱穀機が発明された。当時、脱穀は未亡人の重要な収入減で、千歯扱きは「後家倒し」と呼ばれたが、だからと言って未亡人が餓死したという話も聞かない。

ちなみに野村総合研究所も「芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能などでの代替は難しい傾向」があるとしている。

「なるほど。AIが人の仕事を奪うというよりも、AIを活用した、今よりもっと創造的な仕事が創出されると、美咲さんは考えているわけですね」

「はい。新しい仕事もできるでしょうし、もっと言えば雑務から解放されて、よりイノベーティブな仕事に集中できると同時に、労働時間も飛躍的に減るのではないかと考えています」

「それならいうことはありませんが、とはいえ、『自分にはそれしかできない仕事』をAIに奪われる人も中にはいるかもしれません」

例えば、野村総合研究所の「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能に」という記事には、「人工知能やロボットなどによる代替可能性が高い100種の職業」と「人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業」という2つの一覧があるのだが、前者の職業に就いている人が後者の職業に替わることができるかといえば、難しいかもしれない。

「それに関していえば、まだまだ時間があるので、今から準備しましょうといいたいのです」といずみは答えた。

「強いAI」の登場にはまだ時間がある

いずみはいう。
「AIが人の代替をするとなると、それは先ほども出てきた『強いAI』が実現したということにほかなりません」

AIには「弱いAI」と「強いAI」の2種類がある。弱いAIは、現在存在するような特定用途(画像検索なら画像検索だけ、囲碁なら囲碁だけ)でしか利用できないAIである。その分野では人間を上回る能力を発揮することもあるが、人間の知能を超えたとは認定できない。
AIでなくてもコンピューターは昔から、人間では時間がかかり過ぎてとてもできないような複雑な演算を短時間でこなしてきた。だからと言ってコンピューターが人間よりも知能が高いという人はいない。

一方「強いAI」とは「人類(全体)の知能を超えるAI」のことであって、何でも知っていて何でも考えることができるようなレベルのAIを指す。世界中のあらゆる分野の専門家のトップクラスを集めたよりも、知識も考え方も上を行くAIだと思えばいい。

弱いAIを「特定型人工知能」と呼ぶことがあり、その場合には強いAIを「汎用人工知能(Artificial General Intelligence、AGI)」と呼ぶこともある(ただしAGIは強いAIの必要条件で、さらにプラスアルファが必要とする論者もいる)。

「強いAIは、AI研究者の目標ですが、現時点ではどこから手をつけるべきか分かっている研究者はいないと言っていい状況です。カーツワイル氏は2029年には登場すると予測していますが、本気でそう思っている研究者はまだ少ないように思います。
しかし仮にカーツワイル氏の予測どおりだとしても、あと12年あります。その間に自分の人生を考え、勉強し、行動する時間は誰にでもあると思うのです」

「なるほど。12年が長いか短いか分かりませんし、数年先に何が起こっているかも分かりませんが、人間には自分で自分の人生を切り開く力があると美咲さんは言いたいのですね!」

「ご明察です! 強いAIにもその力があるかもしれませんが、その力に関しては、人間は負けないと思うんです。闇雲にAIを恐れず、人間の可能性を信じ、AIを有効活用、あるいはAIと共存していければ、人類の未来は明るいと私は信じています」

まとめ

  • 「シンギュラリティ」とは、レイ・カーツワイル氏が、2005年に発行した著書で発表した概念であり、人間と機械が融合することで人類の抱えるさまざまな問題が解決し、それ以前には戻れなくなるという「技術的特異点」である(スケールの大きな話で、そのためSF的な内容も含まれている)
  • AIによって日本の労働人口の49%が代替されるという試算もあるが、テクノロジーの進歩でそれまで人間がやっていた労働が機械化されることは人類の歴史上ずっと続いてきたことであり、闇雲に恐れる必要はない
  • 人間の労働が代替されるためには「強いAI」の登場が必要であるが、その登場までにはまだ時間があり、じっくり考える時間もまだある

いずみの目

「強いAI」は前回ご紹介した「チューリングテスト」に合格するものだという人がいます。少なくともそれが必要条件であることに間違いはないでしょう。そのためには、まず人間と自然な会話ができることが最低条件になります。
強いAIは、もしかしたらチャットボットのような会話型AIの改良から生まれてくるのかもしれませんね。

対話型自動応答AIサービス「CAIWA Service Viii」

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

* この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
  日立システムズの公式見解を示すものではありません。
* 文章中に記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

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