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第55回 時代はマルチクラウド(2)~マルチクラウドが普及した背景

複数のクラウドを組み合わせて利用するマルチクラウドが主流になりつつあります。
マルチクラウドは従来のクラウドとはどう違うのか、なぜ普及しているのか、そして導入に際してどのような課題があり、どうすれば解決できるのかについて、クラウドについておさらいしながら3回にわたって解説していきます。



前回のおさらい

YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、同社の山田昭CIOからの依頼で、「マルチクラウド」についてレクチャーすることになった。

いずみはクラウドについて簡単におさらいしたあと、マルチクラウドとは「複数のクラウドを適材適所で使い分ける利用形態」だと説明した。その際に、ハイブリッドクラウドとの違いについても説明した。

時代はマルチクラウド

「マルチクラウドはどのぐらい普及しているの?」と山田が質問した。
いずみが答える。
「まずクラウド全体の国内市場規模ですが、IDCジャパンによれば、2019年には1兆5,744億円、2021年には2兆7,031億円になると予想されています。ちなみに2007年は9,269億円でした。
さらに2019年3月時点クラウド運用企業Right Scale社のサイトで公開されている情報によると、世界で84%の企業がマルチクラウドを活用していました。」
「数年後には日本もそのぐらいの比率になるという理解でいいかな?」
「はい。私はそう捉えています」

なぜマルチクラウド?

「しかし、なぜ複数のクラウドが必要なのだろう?」
「一番大きな理由は、パブリッククラウドごとに特色があり、得意分野が違うということです」

たとえば、大量データを蓄積して処理するのであれば、比較的低価格なAWS(Amazon Web Service)を選ぶことが多い。AIを利用するのなら、GCP(Google Cloud Platform)やIBM Cloudを選ぶことが多い。CRMサービスであれば、Salesforce.comのシェアが高い。Office 365の利用やWindowsの開発環境なら、Microsoft Azureが妥当だろう。

「シャドークラウドの解決というケースも多いようです」

シャドークラウドとは、ユーザー部門が会社やIT部門の承諾なく、勝手にクラウド事業者と契約してサービスを利用することを言う。ITガバナンスやセキュリティの観点からさまざまな問題がある。そこで事後の対応になるが、勝手に契約されているクラウドサービスを調べて公式に認可したうえで、IT部門が一元管理することがよくある。この場合はおのずからマルチクラウドになる。

「あとはBCP(事業継続計画)の観点から、フェイルオーバーのための環境が必要になったことも大きいです」

フェイルオーバーとは、通常利用しているIT環境に障害があった場合に、待機系の環境に自動的に切り替えることを言う。待機系の環境をパブリッククラウドに準備しておくわけだ。BCPが普及しディザスタリカバリ(災害時復旧)の検討が必須となった今、フェイルオーバーは極めて重要な技術と捉えられるようになった。

「なるほど。どれもIT部門としては、きっちり押さえておかないといけない話ばかりだ」と山田が言う。複数のクラウド事業者とただ契約すればそれで終わりではないと、認識を新たにしたのだろう。

まとめ

  • Right Scale社の調査では世界で84%の企業がマルチクラウドを活用しており、数年後には日本もそうなると考えられる
  • マルチクラウドが使われている背景としては、パブリッククラウドごとに得意分野が違うこと、シャドークラウドが増えていること、BCPの観点からフェイルオーバーの必要性が高まっていることなどが挙げられる

いずみの目

パブリッククラウドの運用の仕方にはそれぞれ違いがありますので、統合的に管理するためにはさまざまな知識が必要になります。またフェイルオーバーのための設定も高い技術力が必要です。専門業者に運用を任せることで、コスト削減および自社人材の有効活用につながるかもしれません。

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

* この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
  日立システムズの公式見解を示すものではありません。
* 文章中に記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

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【前回】第54回 時代はマルチクラウド(1)~マルチクラウドとは?
【次回】第56回 時代はマルチクラウド(3)~導入の課題と対策

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