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第1回 中小企業の「やる気」が見られている ~資金繰り編~

金融機関の貸し渋りは確かにあるのかもしれません。ただ、倒産寸前だった会社が運転資金の借入に成功した事例があるのも事実です。国の政策がすべて正しいとは言いませんが、「やる気と能力のある中小企業」を支援したいと考えていて、そのための政策が実施されているのも本当のことなのです。「やる気」を認めてもらえれば、少なくとも返済のリスケジュールは可能ですし、場合によっては運転資金の追加借入も可能です。では、国や金融機関が評価する「やる気」とは何なのでしょうか?


東京下町のとある区民会館で、亀田金太郎(かめだきんたろう)は人が来るのを当てもなく待っていた。
金太郎は、中小企業向けの経営コンサルタント。今年45歳になる。今日はK区の法人会から依頼されて中小企業経営者の無料相談を受けているのだ。

区民会館の研修室には、金太郎を含めて三人のコンサルタントが待機していた。

一人は、60歳代で恰幅がよく、オーダーメイドのスーツがいかにも金持ちそう。もう一人は、金太郎と同じ40歳代で頭の回転の速そうな感じである。

先ほどからこの二人のところには、相談者が何人か来ているのだが、金太郎のところには誰も来ていない。金太郎の見た感じが鈍くさそうにも見えるからだろう。

服装も決して不潔ではないのだが、あまり冴えない感じのスーツ。馬のような優しい目をしていて愛嬌はあるのだが、ズバっとアドバイスしてくれそうな感じではない。

ただし、金太郎のコンサルティング事務所は、十分繁盛している。先代の尊大(そんだい)からのクライアントが何社かあることも大きいが、そこからの紹介で新規開拓したクライアントが一度金太郎とつきあい出すと離そうとしないのだ。ちなみに尊大は、金太郎の父であり、名前とは裏腹の腰の低い好々爺である。

どの会社も、金太郎が最初に訪問したときは、ちょっとだけがっかりした顔をする。ところが何回か訪問しているうちに、みなファンになってしまう。ファンとなった社長が別の社長に紹介するという循環ができ、金太郎の事務所は、いまや行列待ちなのだ。

それでも…。誰も相談に来てくれないと、ちょっと寂しい。金太郎の馬のような目は、いまや市場にひかれていく、荷馬車の子牛のような目になっていた。

そのとき相談室に入ってきた印刷所社長の高田純一55歳は、金太郎とまともに目が合ってしまった。ほかの二人が相談中だったこともあって、高田社長はあまり気が進まなかったが、ふらふらと金太郎の前に座ってしまったのだった。

「いらっしゃい。どういうご相談ですか?」金太郎は、心底うれしそうに聞いた。

高田社長は、震災以降売上が減り、資金繰りに困っているらしい。

「銀行も信用金庫も全然金を貸してくれない。大企業にはちゃんと金を貸すくせに、僕らのような零細企業には全然貸してくれない。世の中間違ってませんか?」と口から泡を飛ばしながら、高田社長は金太郎に迫った。

金太郎はいかにも悲しそうな目をして、こう言った。

「確かにそういう面はあるでしょう。お怒りお察しします。でも、借り方もあるんですよ。」

「僕は、いろんな金融機関に行き、それこそ机に頭をこすりつけんばかりにして頼みまくったんですよ。ほかにどんなやり方があると言うんです?」

「国は、中小企業に本気で頑張ってもらいたいと思っています。」

「本当ですか?だったら、何で我々はこんなに苦労せなならんのです?」

「社長は、『中小企業白書』を見たことがありますか?」

「そんなものがあるのは知ってるが、見ても役に立たんでしょう。」

「そうとも言えないんです。たとえばこの図(『中小企業白書 2011 P77 コラム2-1-1図 中小企業政策の変遷)』を見てください。」

そこには、国が「やる気と能力のある中小企業の支援」をするという基本理念の下に、1998年の中小企業金融安定化保証制度以降、矢継ぎ早に中小企業への金融支援政策を行っていることが書かれていた。

「そんなの口先だけでしょう?あんたは国の回し者か?」

「私も国の政策がすべて良いとは思っていません。ただ、国が何を目指して、何をしようとしているかをきちっと知ることで、有利になれると言いたいだけなんです。それを知るためにもっとも有効な資料が『中小企業白書』です。なかなか立派なものですよ。少なくとも中小企業庁の役人がまじめに取り組んでいることは分かります。まあ、国会に提出しないといけないのが大きいのでしょうけどね。ただ、せっかく税金を使ってこういうものを作り、それを無料で公開しているのだから、活用しないと損です。」

高田社長は、まだ納得いかないという顔つきだったが、金太郎は構わず続けた。

「社長は、付加価値とは何か知っていますか?」

「バカにせんでください。要するに、我々が労働したことによって仕入値と売値に差がつくが、その差のことでしょう?それが資金繰りとどう関係あるの?」

「間違いではありませんが、もう少し正確に把握すると、実はお金も借りやすくなります。」

高田社長は、少し興味を持ったようだ。金太郎は、その表情を見ながらさらに続ける。

「付加価値額をどう計算するかお話ししましょう。一般的には『総生産額から原材料費と機械設備などの減価償却分を差し引いたもの』と説明されますが、これは『営業利益+人件費+減価償却費』と同じ値になります。」

「うーん、会計は苦手なので、まあ、そのまま信じましょう。」

「ちょっと考えれば分かることですが、いいでしょう。信じてください。で、中小企業庁は中小企業を評価するときに、付加価値額をかなり重要視するんです。なぜだか分かりますか?」

「うーん。営業利益が大きいと最終的に法人税も増えるからかな。」

「すばらしい!ご明察です。ほかの2つも分かりませんか?」

「人件費が多いということは、給料をたくさん払っているということで、つまり雇用拡大に貢献しているということかな。」

「そうそう。その調子。」

「減価償却費が大きいということは、設備投資をしているということだね?」

「そうなんです。要するに、税金をたくさん払って、雇用に取り組み、設備投資をしている中小企業を国は助けたいと思っているんです。先ほどお見せした図に『やる気と能力のある中小企業の支援』という基本理念が書かれていたでしょう?『やる気と能力』というのは、納税・雇用・設備投資の3つにどれだけ真剣に取り組み、成果を出しているかということなんですよ。」

「そうなると、ますます絶望的だ。うちなんか『やる気』も『能力』もない…」

「大丈夫です。まずは『やる気』を見せれば、お金を貸してくれるんです。」

「どうやってやる気を見せたらいいの?」ちょっと関心を持ったらしい。

「『経営改善計画書』を作るんです。3年かけて雇用と設備投資を増やし、営業利益をこれぐらいにする、という計画を作るんですよ。いいですか?ほかは要りません。この3つがハッキリと分かるような計画書にするんです。それに納得してくれれば、信用保証協会のお墨付きがついて、金融機関もお金を貸してくれるはずです。」

「とほほほ。そんな計画書が作れるなら、苦労しないよ。」

「大丈夫です。『やる気』があれば、誰でも書けます。書いたことがないから尻込みをしているだけですよ。こんなときこそコンサルタントの出番です。私が一緒に考えますから、ここで目次と下書きを作りましょうよ。」

高田社長は一瞬帰ろうかと思ったが、金太郎の異様な迫力とタダならという気持ちで『経営改善計画書』の目次と下書き作りをすることにした。

「目次の大きな項目としては、このようなものがあればいいかと思います。」

金太郎は、手元のレポート用紙に次のように書いて、高田社長に渡した。


 1. 当社の事業目的
 2. 経営改善計画の基本的な考え方
 3. 資金繰り表
 4. 収支計画表
 5. 売上高および営業利益の増加策
 6. 具体的な取り組み


「1.が実は大事なんですよ。存在理由のない会社にお金を貸すほど銀行も余裕がありません。存在理由がなければお客さまが必要とせず、地域社会にも応援されず、つぶれていきます。もちろん理念だけではダメですが、それがあるかないかはけっこうシビアに見られます。」

「そういうものですか。でも今さら理念なんて言っても、思い浮かびません。」

「必ずあるはずですよ。一緒に考えましょう。あと、先ほどの話との関連では、5.はもちろん営業利益の話で、6.が雇用と設備投資の話になります。5.と6.が書ければ、2.はそれを要約すればいいだけです。ただ、その前提として、3.と4.が必要になります。これらがないとどれだけ売上が必要か分かりませんからね。ここでさすがに細かい数字を作るのは難しいですが、おおざっぱな数字で一緒に考えていきましょう。では、1.からいきましょう!」

それから2時間後。金太郎が「よし!できた!」と宣言したときには、会場はどよめきと拍手に包まれた。金太郎と高田社長の真剣なやりとりにいつのまにか少しずつ見物人が集まっていたのだった。

金太郎は大いに照れながら、言葉を続けた。

「細かい数字は、経理担当や税理士さんも入れて見直してくださいね。また、真剣さがあれば、金融機関も一緒に考えてくれます。少なくとも、当面は利払いだけで済ます交渉であれば、ほぼ間違いなくできると思います。」

「追加で借入するのは無理でしょうか?」

「ちょっと難しいかもしれませんが、本当に必要ならあきらめないでください。私の知り合いの社長に、一度倒産経験があるので借入ができず、自分名義で借金して自己破産寸前のピンチになった人がいます。しかし、そこから営業努力をして、受注して、見事に当面の運転資金を借入できました。要は、社長がどれだけ本気かです。」

「分かりました。がんばってみます。」

「それから、世の中には本気で地域の企業を応援しようという金融機関もあります。」

金太郎は、『中小企業白書 2011』の「事例2-2-3」(P163)、「事例2-2-4」(P165)、「事例2-2-5」(P172)などを紹介した。

「こんな銀行や信用金庫もあるんですね。K区にだってあるに違いない。探してみます。」

「頑張ってください。」

「ありがとう。ありがとう。」

高田社長は、金太郎の手を何度も何度も握りしめてから、その場を去って行った。そして、金太郎の前にはいつのまにか行列ができていた。

2か月後、高田社長の『経営改善計画書』は信用保証協会の審査を通り、資金繰りに目処がついた。金太郎の言うとおり、高田社長が本気だと信じて支援してくれる信用金庫の担当者がいたのであった。

まとめ

・ 国(政府)は、納税・雇用・設備投資に取り組む会社を「やる気と能力のある会社」と定義し、そのような会社を支援するための施策を打ち出している

・ 資金繰りをするためには、少なくとも「やる気」を示そう。そのためには3年で雇用と設備投資を増やし、営業利益を上げるための『経営改善計画書』を作る

参考文献

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

*この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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