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第2回 なぜうちには求職者が来てくれないんだろう? ~採用/人材育成編~

就職氷河期と言われ、有効求人倍率が1をはるかに下回っているにもかかわらず、従業員300人以下の企業では求人が求職を大きく上回っています。
なぜ中小企業には求職がないのでしょうか?どうしたら志のある若者を引き付けられるのでしょうか?また、企業は採用だけでなく人材育成にも力を入れなければなりませんが、優良な中小企業はどのような取り組みをしているのでしょうか?


中小企業には求人数の約4分の1しか求職者がこない

「大学を出ても就職できない若者がたくさんいるというのに、なぜうちには来てくれないんだろうねえ。」

栃木県で従業員50人規模の卸売業を営む花村喜多男(仮名)社長は、金太郎がやって来るなりこう切り出した。金太郎は月に1回、この会社を訪問することにしていた。

「それは御社だけじゃないんですよ。2012年には若干、改善されそうではありますが、大卒者の場合、従業員300人未満の企業では、求人数の約4分の1しか求職者がいないんです。就職氷河期と言われていますが、それは従業員1,000人以上の大企業で働き口が無いだけの話です。」

金太郎はそう言いながら、いつも持ち歩いている『中小企業白書 2011』の21ページ(第1-1-26図(1)2011年3月、2012年3月の大卒者の求人倍率)を指し示した。

「あれ、本当だ。4分の1とはずいぶん少ないね。想像していた以上だ。でも、就職先がないのに、なぜ中小企業には人が来ないんだろう。」

「それについては、海老原嗣生さんという方が『中央公論』の記事で要領よくまとめておられました。えーと、確か…。」

金太郎は、記事を思い出しながら、そこにあったホワイトボードに以下の5項目を書いていった。

1. 分からない
2. 不安
3. 教育が受けられない
4. 同期がいない
5. 給与が安く、休みも少ない

「1番目は、中小企業からの情報発信が少なくて、何をやっている会社かよく分からないということです。これは簡単に改善できますし、御社でもやっていますよね?」

「うん。でも、まだまだうちの良さを分かってもらうには不十分かなあ。」

「まあ、それは一緒に改善していきましょう。2番目はですね…、最近“ブラック企業”という言葉がはやっているでしょう?」

「ああ、知ってるよ。普通の会社に見えるけど、裏で不正をしていたり、そうでなくても社員への待遇がとても悪い会社だね?」

「不満があって辞めていった人が悪口を言っているだけ、という場合もあるようですがね。“不安”というのは、中小企業だと、そんなひどい会社があるかもしれないと考えているんでしょう。大企業ならそんなこともないだろうと。本当のところ、会社の規模は関係ないはずなんですが。」

「そういうことも分かってもらおうとしたら、情報発信だけではだめかもしれないね。」

「ある程度は可能でしょうが、実際に会社を見てもらう必要があるでしょう。」

「3番目は、なかなかなあ…。」

「分かります。でも、教育研修のための助成金もありますし、商工会議所のセミナーなどを利用している会社も多いんです。」

「4番目は、しかたがないよねえ…。」

「そうですね。ただ、中小企業どうしで横のつながりを作って、地域の中で同期意識を持たせるという取り組みも効果がありそうです。」

「それはいいかもしれないね。商工会議所のほかの社長たちとも話をしてみるか。会頭も乗ってくるかもしれないな。」

「5番目に関しては、大企業だから給与がよくて休みが多いかというと、一概には言えなくなってきています。休みに関しては、大企業の社員の方がきちんと取れていないのではないでしょうか。われわれもそうでしたが、最近の若い人たちにしても、給与の高さが必ずしもモチベーションにはつながらないんです。むしろ仕事内容との兼ね合いが大事で、給与が高くて休みが多ければいいとばかり思っているわけではないんですね。」

「大都会では無理でも、地方だと生活水準は高くなるかもしれないしね。」

「それは若い人たちも考えているようですね。今、時代の流れに敏感な女子学生の間で農業が人気だといいます。やはり仕事に対する考え方もいろいろなんですね。先ほど、海老原さんが挙げられた5項目を紹介しましたが、私は最初の2つの項目、“分からない”と“不安”が若い人たちにとって第一関門のように思います。」

「確かにそうかもしれないね。だったら、われわれのような地方の卸売業でもチャンスはありそうだ。最初の関門が無くなれば、それから先はわれわれの努力次第だからね。こう言っちゃ悪いが、大企業でもあまり変わらない話だと思うよ。」

中小企業に対する新卒者就職支援制度とは?

「チャンスは絶対にありますよ。例えば、北海道の帯広に近い音更(おとふけ)町に、毎年40名の大卒者を採用している製菓会社があります。全国から4,000名の応募があるというんです。なんと100倍の求職率です。」

「ああ、柳月さんのことだね。『日本でいちばん大切にしたい会社』という本に書いてあった。そうだね、そんな事例もあるのに悪い方ばかり見ていたようだ。」

「中小企業に対しては、『新卒者就職応援プロジェクト』や『ドリームマッチプロジェクト』といった支援制度もあります。」

 金太郎は、『中小企業白書 2011』の先ほどと同じ21ページの下側の図(第1-1-26図(2)新卒者就職支援プロジェクト及びドリームマッチプロジェクト)を指し示した。

「なるほど、インターンシップか!」

「『新卒者就職応援プロジェクト』は、名前のとおり新卒者を応援するものですが、中小企業側にも魅力的な内容になっています。」

「新卒者就職応援プロジェクト」は、既卒3年以内の未就職者を対象に、原則6か月間の長期職場実習を実施するもので、期間中実習生には日額7,000円、受け入れ中小企業側には日額3,500円の助成金が支給される。

「これだけの期間これだけの助成金が出るなら、双方にとってメリットは大きいね。実習生も会社の内容がよく分かるだろうから、海老原氏が指摘する5項目は解消できるかもしれないね。」

「海老原氏は、助成金欲しさにブラック企業が制度を悪用することを危ぐしておられますが、御社のような真面目な会社には“願ったりかなったり”ではないでしょうか。」

「『ドリームマッチプロジェクト』は、企業のPRを支援してくれるもののようだね。」

「おっしゃるとおりです。企業がインターネット上でPRするのを支援してくれるほか、Uターン、Iターンを目的とした合同企業説明会なども主催してくれます。ただし、事例を見る限りでは、成果はまだこれからのようですね。」

金太郎はノートパソコンで「ドリームマッチプロジェクト」のホームページを開いてみせた。

「どれどれ。なるほど、ちょっと事例が少ないかな。でも、自分でもよく見極めてみよう。活用できるかどうかは自分たち次第のようだから。」

「さすがです。そうおっしゃると思っていました。」

今は優れた企業理念が人を引き付ける時代

「ところで、採用だけでなく、教育というか人材育成というか、そういうことで社員の能力を底上げしていくことも必要だね。上手にやっている会社はどうしているんだろう。」

「商工総合研究所が出している『中小企業と若年者雇用』という報告書があるんですが、どこも苦労されているようですね…。これなどは参考になりますか?」

金太郎は、報告書の24ページから塩野製作所の事例を指し示した。


 (株)塩野製作所(事例5)はISO9001:2004及び航空宇宙産業の品質マネジメントシステムである
  JISQ9100:2000で、年間の教育の計画、実行が求められており、同社ではそれを基に教育・訓練を熱心に行っている。内部
 講師による品質等の勉強会をはじめ、航空会社や大手メーカー講師による勉強会、ミーティングなど多様な教育を企画・実施
 している。また、部品加工企業では、社員が部品の全体像を目にする機会が少ないため、仕事の意味、重要性を認識し
 づらい。同社では、教育・訓練や工場の見学会を通じて、部品を見たり、部品関連の話しを聞く機会を設け、仕事の意義確認
 に役立てている。


「人材育成を品質マネジメントシステムに組み込むというのはユニークなやり方だと思います。それから、やはり『仕事の意義確認』というのは重要です。」

「モチベーションにつながる大事な部分だね。」

「ただ、それだけではなくて、もう1つ重要なのは社長の腹のくくり方のようですよ。」

金太郎は、報告書の32ページ、香川シームレス株式会社について書かれた部分を指し示した。


 (当社では社長が新卒採用を将来への投資と腹をくくり、若手の教育に自ら関与し、若手にチャレンジの機会を与えている。


香川シームレスは、下請体質からの脱却を目的に、香川県の「特定地場産業ブランド確立支援事業」を活用して、若手を中心に同社のブランドを確立するプロジェクトに取り組んでいる。若手の成長、満足感、意欲の向上に一役買っているのは間違いないのだが、現場からは理解されにくい。そのことが、社長が腹をくくるという発言につながっているのである。

「社長次第か、耳が痛いね。」と言いながらも、花村社長は満足そうだった。方向が見えてきたからだろう。

「先ほどの柳月さんの例でもそうですが、“こんな会社で働きたい”という会社には、場所や規模に関係なく求職が殺到します。ありきたりかもしれませんが、今は優れた企業理念が人を引き付ける時代と言えそうです。」

「よし、分かった。じゃあ、今日は企業理念についてじっくりと話し合おうじゃないか。」

会議室での打ち合わせだけでは足りず、宇都宮の居酒屋で夜遅くまで、二人の熱のこもった話は続くのであった。

まとめ

・ 従業員300名以下の中小企業にとって大卒採用はハードルが高いが、求職が少ない理由もある程度明らかであり、それに対する国などの支援もある。そのような支援策を上手に活用するべきである。

・ 人材育成がうまくいくかどうかは、企業理念と社長の意志に左右される部分が大きい。

参考文献

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

*この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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