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第3回 営業をしたことがないのだが… ~新規開拓編~

積極的な営業をしない下請体質のままでは、販売拡大ができないために高い利益率を上げることは望めません。だからこそ、多くの中小企業が、顧客数拡大、顧客単価上昇に取り組んでいます。しかし、なかなか思うような結果が出ていないのが現状です。この現状を変えるためには何が必要なのでしょうか?


下請体質では低収益はあたりまえ

大木製作所は、東京都の下町にある社員20名の町工場である。いくつかの大手製造業に部品を納入しており、技術と品質には自信がある。現在の社長、大木太一は二代目で、創業者である父から事業を受け継いだ。この30年間、おおむね安定した経営を続けてきたが、そろそろ三代目への引き継ぎを考えている。

金太郎が大木製作所を訪問すると、いつも元気な大木社長が何やら浮かない顔をしていた。

「実は、T製作所から取引額の縮小を打診されていてね…。」社長はこう切り出した。

T製作所は、大木製作所の売上高の約30%を占める大得意先だ。

「それは大変ですね。」

「ほかの取引先で何とか埋められないか頼みに行ったけど、どこも不景気で、芳しい返事はなかなか…。」

社長が問題を抱えていそうな時、金太郎はひとまず黙っていることが多い。下手なアドバイスは逆に社長のやる気をそぐからだ。黙っていると、社長は自分の意志を自分から話してくれる。金太郎は馬のような優しい目でじっと社長を見つめていた。やがて、大木社長は決心したように語り出した。

「実はね、息子に会社を継がせる前に、もう一仕事しようと思ってるんだ。」

「はい。」

金太郎は、社長の前向きな発言に少しホッとした。

「この前、ある本を読んでいたらドキッとしたよ。『一倉定の経営心得』という本なんだけどね。その中に、『下請けの低収益から脱出したければ、販売という難行苦行に耐えなければならない』と書いてあった。営業という、いちばん苦しいことを避けていたら、低収益は当たり前だというんだ。」

その本は、金太郎も愛読し、何か所も赤線を引いてある。

"いいものを提供すれば売れる"わけではない

「私はね、エンドユーザーに直接売れる商品を開発しようと思っているんだ。ただ、ご存じのとおり、私は先代から会社を引き継いだだけだから営業の経験がない。どうやって売ったらいいのか分からないんだよ。」

「製造業やIT業界には、社長のような方が多いようですね。実は何人もの社長から同じような相談を受けています。実際、中小企業の8割弱が『顧客数拡大』を生産性向上のための取り組みとして重要だと答えています。」

金太郎は、いつも持ち歩いている『中小企業白書 2011』を取り出し、242ページの「第3-2-3図 労働生産性の向上のための取組の重要度」というグラフを示した。

「こちらが実際に取り組んでいる会社の施策と効果です。」

金太郎が次に示したのは、同書243ページの「第3-2-4図 (1)顧客数拡大の取組の実施状況と実施した企業の効果」というグラフである。これによると、取り組みの状況は以下のようになっている。


顧客数拡大に取り組んでいる企業 89.0%
<施策の内容と実施状況>
商品・サービスの安定的な品質の維持 70.9%
新商品・サービスの開発・提供 59.0%
海外への輸出 11.4%
海外への直接投資 4.8%

「みんな頑張ってるんだね。」

「そうですね。しかし、ちょっと厳しいことを言わせていただいてもよろしいでしょうか?」

「金太郎先生が『厳しいこと』とは珍しいね。どうぞ存分に。」

「海外展開は置いておくとして、どうも『いいモノやいいサービスを提供しさえすれば売れる』と考えているように思えるんです。アンケートの設問や集計の仕方に問題があるのかもしれませんが…。」

「そうではないのかね?」

「いいモノやいいサービスを提供するというのは前提条件だと思うんです。そして実際に、いいモノやいいサービスは世の中にたくさんあります。消費者がどうやって選んでいいのか分からないぐらいです。」

「確かにどこの商品も似たり寄ったりではあるね。私もスマートフォンを買おうと思って家電量販店に行ってみたけど、何を買えばいいのか全く分からなかった。店員に尋ねても、専門用語が多いせいか要領を得なくてね。あきらめて帰って来て、息子に選んでもらったよ。」

「そういう状況の中で自社の製品を選んでもらうんですから、何らかの訴求ポイントがなければいけません。『品質』の意味は、突き詰めれば『顧客がどれだけ満足するか』ということですが、それは使ってもらわないと分かりません。ですから、課題は『どうしたら使ってもらえるか』なんです。」

「テレビのコマーシャルにお金をかけたり、無料でサンプルを配ったりするのは、とにかく使ってもらうための努力というわけだ。」

「そうですね。ところで、先ほどの中小企業白書のグラフ(第3-2-4図)には、施策の効果が得られるのにどのぐらいかかったかも出ています。『商品・サービスの安定的な品質の維持』と『新商品・サービスの開発・提供』の2項目では、約半分の企業が1年から2年後に効果が出始めたとしています。ですが、5年後にようやく効果が出たという企業も約2割ありますし、効果が実感できないという企業も3割近くあるんです。海外展開にしても、程度の違いはあれ同じような傾向があります。商品力や開発力だけに頼ってもなかなかうまくいかないということだ思うんです。」

「5年やっても効果が出ないと、うちのような零細企業にはかなり厳しいね。三代目のためにも、1年か2年で何とかしたいなあ。」

「お察しします。」

すご腕の営業を雇う必要はない

「となると、すご腕の営業担当を雇わないといけないかな? コストが大変になりそうだね。」

「その必要はありません。御社の社員でやれると思います。」

「ほう、どんなやり方で?」

「2通りの方法が考えられます。1つは短期的な取り組み、もう1つは長期的な取り組みです。できれば両方を実施されるといいですね。」

「では、短期的な取り組みから聞かせてくれないか?」

「御社の製品が機械部品だということを考えると、初めは卸売業を経由して販売することになるでしょう。そうなると、製品の特徴やセールスポイントをしっかり説明する必要がありますね。まず最初にやるべきことは、既存顧客へのヒアリングです。」

「何を聞きに行くんだい?」

「御社の製品を選択した理由と、その製品の使われ方です。特に、選択した理由については、おそらく想像していなかったような話が聞けると思います。」

「ほう、それで?」

「それらの話を聞くことによって、ユーザーのいろいろな課題が見えてくると思います。そこから、まず最初の仮説を立てます。具体的には、御社の新製品のユーザーが持っていそうな課題は何かという仮説です。次に、その仮説を検証するために、想定した課題が実際にあるのかどうか、卸売会社を回って聞くんです。」

「いきなり売りに行ってはいけないのかね?」

「それはどんなすご腕の営業でも難しいでしょう。まずは、仮説を検証するために聞きに行く。これなら先方も会ってくれますが、いきなり売り込みに来たと思われれば足元を見られます。断られてしまうと、次につながりません。」

「それはそうだ。」

「何社か回っているうちに、仮説が修正されるとともに情報量も増えていきます。そうなってきたら今度は新製品の企画を持って行くんです。この時に大切なのは、商品を売り込むのではなく、あくまでも『このような課題を解決できる』という提案をすることです。」

「それなら営業よりも開発の人間の方が得意かもしれないね。」

「そうなんです。基礎的なマナーやコミュニケーションについての教育は必要かもしれませんが、技術者に営業してもらう方が成功確率は高いように思います。」

「どのぐらい時間がかかるものだろうか?」

「どれだけ労力をかけられるかにもよりますが、3か月から半年ぐらいあれば、最初の企画が通るところまで行けるのではないでしょうか。」

これは金太郎のコンサルティング経験に基づいた数値である。

「うん、そのぐらいならやってみる価値はありそうだ。」

エンドユーザーに直販するためには長期的な取り組みが必要

「次は長期的な取り組みです。これは直販のための戦略です。やり方はいろいろありますが、インターネットの例で説明します。DMなどでも考え方は一緒です。また、いろいろなやり方をミックスした方が当然、効果が高くなります。ただし、予算はそれだけ必要になりますね。」

「ん?」

予算と聞いて社長の口が開きかけたが、金太郎はかまわず続けた。

「卸経由の販売で実績が上がってくると、エンドユーザーがイメージできてくるはずです。イメージされるターゲットに対して、インターネットを使って情報提供をします。コストを考えるとメールマガジンがいいでしょう。」

「メールマガジンなら、私もいくつか読んでいるよ。」

「よく使われるのが、無料サンプルの希望者にメールマガジンを送っていいか聞く方法と、リスティング広告を使ってPRする方法です。」

「無料サンプルは分かるけど、リスティング広告って何?」

「GoogleやYahoo!などで検索をしたことはありますか?」

「ああ、私でもそのぐらいはあるよ。」

「検索結果と連動して広告が出ますよね。あれがリスティング広告です。これは、その広告がクリックされて初めて広告主に課金される仕組みなので、興味がある人を低コストで集めることができます。」

「ふむふむ、それはいいね。」

「もしリスティング広告をされるのであれば、やり方にコツがあるので、実際に始めてから一緒に改善していきましょう。メールマガジン読者が集まれば、セミナーなど何らかのイベントを開催します。イベントでは、御社の商品に興味がある人たちが持っていそうな課題の解決策をテーマにします。セミナーでなくてもかまいませんが、とにかくエンドユーザーと実際に会うための場を作ることが大事です。」

「実際に会わなければだめなのかね?」

「商品の特性によりますね。インターネット上の仮想的なイベントでもかまわない商品もありますが、御社の場合は比較的高額な商品になりそうなので、実際のイベントがいいと思います。そういう意味では、展示会に出展して、そこにユーザーに来てもらうようにすることも考えられます。」

「商品に応じてケースバイケースで考えようということだね?」

「はい。そうやってエンドユーザーと直接会える機会を作ることと、イベントなどに足を運んでくれた人に対して、あらためて商談機会を作るような取り組みが必要でしょうね。」

「それは時間がかかりそうだね。」

「確かにそうですね。徐々に信頼を築いて、御社のファンになってもらい、それから販売機会をいただくことになりますから、早くても1年、うまくいくようになるには2年から3年はかかるかもしれません。」

「短期的な取り組みは狩猟型、長期的な取り組みは養殖型という感じだね。」

「うまいことをおっしゃいますね。そして両方続けていくことが業績の安定につながっていきます。将来的には、養殖の方が徐々に売上高に占める割合が増えていくはずです。」

「よし、狩猟の方は私がやって基礎を作り、養殖のほうは三代目が今から取り組むプロジェクトにする方向で検討するよ。」

「それがいいと思います!」

金太郎は、大木社長がすっかり元気を取り戻したのを見てうれしくなった。

まとめ

・営業の方法には、短期的に成果が上がるものと、長期的に取り組んで初めて成果が上がるものがある。

・短期的には、仮説検証を早いサイクルで繰り返し、提案を持って取引先に行く。

・長期的には、情報提供から始め、徐々に信頼関係を築き、ファンになってもらうことが販売機会につながる。

参考文献

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

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