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第5回 未曽有の災害からの企業再生 ~危機を乗り越える経営とは~

東日本大震災が社会や経済に与えた影響は大きく、そのうえ最近の円高で多くの企業が苦しんでいます。しかし、被災地でも震災のダメージを乗り越えて力強く再起を図っている会社はいくつもあります。このような会社は大きな危機を乗り越えるために、どのような取り組みをしているのでしょうか?


被災地で再起に成功している会社

「震災の影響はじわじわ来ているよ。先月なんか売上高が前年比で7割に落ちてる。そのうえ円高だ。泣けてくるよ。」

静岡県で部品販売を営む宮木金属加工(仮名)の宮木太一(仮名)社長は53歳、苦しそうな表情で金太郎に打ち明けた。数年前からは輸出にも取り組み、その効果が出てきたところだったので、特に円高は深刻な事態なのだ。

「みなさん、本当に苦しんでおられます。お察しします。」

「被災地に比べればまだいいんだろうけどね。しかし愚痴の1つも言いたくなるよ。」

「私でよければ言ってください。でも、被災地でもがんばって再起に取り組んでいる会社があるという話の方が元気が出ませんか?」

「そんな会社もあるんだね。ぜひ聞かせてよ。」

「まずは、この事例を見てください。」

金太郎はいつも持ち歩いている『中小企業白書 2011』を取り出して、38ページを開いた。
「事例1-2-1 緊急事態に備えてBCPを策定していたことにより早期復旧を果たした企業」と題された事例が載っている。

「宮城県仙台市の産廃処理・上下水道の清掃業者、鈴木工業株式会社さんの事例です。同社は中間処理施設の主要設備のほとんどを震災で失いました。社員の安否確認は迅速に行われ、社員全員の無事が確認されました。3月16日には事務所を復旧し、地震から約1週間でリサイクル業務もできるようになり、その他の中間処理業務も約1か月で復旧しました。」

「へえー、それはすごいことだね。」

「そういうことができたのは、きちんとBCPを策定し、訓練もしていたからです。」

BCP(事業継続計画)とは?

「BCPって最近よく聞くけど、実際にはどういうものなの?」

「Business Continuity Planの略で、日本語では『事業継続計画』と言われます。災害の発生時にどういう方法で事業を継続するかという計画書を作成し、マニュアル類を整備し、定期的に訓練を実施することなどが主な内容です。特に今回の震災を機に、その重要性が叫ばれるようになりました。鈴木工業さんでは2009年の9月にBCPを策定していたそうです。」

「それが実際に役に立ったということだね。」

「はい。鈴木工業さんの場合に特筆すべきことは、緊急用に衛星電話を設置していた点でしょう。電話回線も携帯電話もほとんどつながらない状況でも、お客さまや取引先、役所などと連絡を取ることができたと言います。早期の復旧ができたのは、そのおかげでもあったと思います。」

「迅速に連絡できるだけでも、仕事にとっては大きいからなあ。」

「この事例、どう思われますか?」

「そうだね、取引先がBCPを策定していると安心できる気がするね。関東も東海も、いつ大きな地震が来るか分からないと言われているから、そういう取り組みをしている会社と取り引きしたいと思うのが自然だよね。」

「そうなんです、その視点は重要ですね。ということは…。」

「そう、うちでもBCPを作るべきだろうね。それがお客さまからの評価ポイントになるかもしれないからね。」

「そのとおりだと思います。BCPを策定するためには、専門のコンサルタントやIT企業なども入れて検討することが必要になりますが、それらの人たちに依頼するための準備と検討の段階では、私もお役に立てると思います。」

「ありがとう、ぜひ頼みたいね。」

応援される会社になる

「BCPの策定は、特に今回の震災で注目されるようになりましたね。しかし、ほかにもいろいろな対策があります。もっと事例を見ていきましょう。」

金太郎は、先ほどのページの下にある「事例1-2-2 地元での復興に強い意志を持って取り組んでいる企業」という事例を指し示してた。

「宮城県石巻市の中堅造船会社、株式会社ヤマニシさんの事例です。同社は2008年に設備を増強し、海外の需要にも対応してきました。ところが、今回の震災で設備の多くが被害に遭い、建造中の2隻の大型貨物船も流されてしまいました。工場よりも護岸の修復を優先せざるを得ず、工場は2012年の復旧を目指していますが、地元に根付いた会社として地元のためにがんばっているそうです。」

「ふむ、大変なのは分かるけど、どういう教訓があるんだろう。」

「このような強い意志のある会社は応援されるということなんです。もちろん、以前から信頼関係を築いていたこともあるでしょうが、日本国内だけでなく海外からも、工場の復旧時には一番船を建造してほしいという申し出がいくつも寄せられているそうです。」

「なるほど、強い意志か。お客さまは経営者の姿勢を見ているんだね。」

「被災地に対する同情ももちろんあるでしょう。しかしそれだけではないはずですね。」

被災地以外の事例

「被災地以外の事例はどうなの?」

金太郎は、『中小企業白書 2011』の39ページ、「事例1-2-5 内定を取り消された被災地域の高校の卒業生を積極的に採用する企業」の内容を説明した。

「大阪府堺市の大紀水産株式会社さんの事例です。鮮魚・水産品の加工販売や回転寿司店の経営をしている企業です。従業員113名という規模ながら、震災の後で宮城県気仙沼市の高校に、内定を取り消された人の中から10名まで採用可能で、住居も家賃の8割まで補助する予定だとハローワークを通じて伝えたそうです。」

「すごいねえ。うちは今50人の従業員がいるけれど、それでいくと5人雇うことになるね。そのうえ家賃まで補助するなんて、かなり勇気が要るなあ。」

「大紀水産さんのいい所は、『採用した人たちが小売業や外食産業で勉強することで、地元に帰って水産業に就いた時にいろいろな面で役に立つ』と言っているところです。また、『近畿と三陸の距離が縮まり、販路の拡大で価格を下支えできれば、長い意味で復興支援になる』とも言っています。遠く離れた企業が、人を中心に据えた復興支援に取り組んでいることに感銘を受けます。」

「なんだか涙が出そうだよ。こんな社長もいるんだねえ。」

愚痴は構わないが……

「きれいごとに聞こえるかもしれませんが、先ほどのヤマニシさんといい、大紀水産さんといい、こんな時だからこそ、世間はこういった社長の意志や企業理念をきちんと見て、評価しているということでしょうか。」

「なるほどね、愚痴を言っていては恥ずかしいってことだね?」

「いえいえ、愚痴はいいんです。あの松下幸之助さんも、愚痴や悩みを言えれば精神的に楽になって、自分の力を十分に発揮できるようになる、と言っています。」

「そうなの?」

「そうなんです。ただし、家に帰って奥さんに愚痴を言えばいいわけではありません。松下さんが言うのは『愚痴を言える部下をかたわらにおいておくことが望ましい』ということなんです。」

「愚痴もなかなか奥が深いね。」

「愚痴は言っても構わないんだけど、結局は行動を見ているんですね。みんな、見ていないようでいて見ているんです。ですから、こんな取り組みも世間に知られることになります。」

金太郎はノートパソコンを取り出してブラウザーを起動し、ブックマークしてあるインターネットのニュース記事をクリックした。

こんな旅館に泊まりたい

「宮城県南三陸町にある、南三陸ホテル観洋さんの取り組みです。1ページ目にこのように要約されています。」


 ホテル観洋は、健全な地域社会の中でしか企業は発展することがないと考えている。だから、少しでも雇用を創出
 するために、地震直後の大変なときからレストランや売店の営業を再開した。さらに、旅館の施設を活用し、人口
 流出を防ぐために、地域住民のために、ぐるりんバスや寺子屋のサービスを無料で開始した。さらに地域社会が復興
 するために、旅館として何ができるのかを今も考え続けている。


「すごいね。こんな旅館なら泊まってみたいよ。」

「機会があればぜひ。ホテル観洋さんでは600人の被災者を受け入れましたが、彼らが仮設住宅に移ってからも、心のケアが必要と“ぐるりんバス”(仮設住宅を巡る無料のバス)や“寺子屋”(ホテル内の一室を無料で開放した子供たちの学習の場)のサービスをしています。」

「どこかの国の、復興よりも政局のことしか考えない政治家たちに読ませたいね。」

「この記事を書いた記者もそういう思いだったのでしょう。しかし、政治家任せにしていては復興も遅れる一方です。自分たちでやれることをやるというホテル観洋の取り組みが感動を呼んで、多くの人を巻き込み始めています。『人類が21世紀に作らなければならないひとつの企業の姿を、がれきの中で私たちは見ているのかもしれない』という記者の感想に、私も共感します」

100年続く企業理念を創る

「新しい企業の姿か。そこまで踏み込んで考えていく必要があるんだろうね。」

「今回、戦後の復興がよく引き合いに出されますね。ですが、私のような者は高度成長期を経てから物心がついた世代なので、戦後の復興と言ってもあまり実感はありません。それでも、昭和40年代と今とでは隔世の感があります。日本人は確かに付和雷同という一面もあるでしょうが、未曽有の危機からはい上がるしぶとさも、ほかには負けないものがあるはずです。私は、戦後の日本の復興を支えてきた人たちには共通点があると思っています。」

「それは何だい?」

「理念です。人のため、国のために自分が何かをやってやろうという気持ちです。その気持ちを持っていた人たちが、結局は成功者になったということではないでしょうか。」

「それは言えてるなあ。でも、理念を持つのも難しいことだよ。」

「分かります。それで、最初に戻るんですが、BCPが重要なんですよ。」

「ん?唐突だね。」

「BCPで最初に問われるのは、どうして自社の事業を継続していかなければいけないのか、ということなんです。この問いに答えることがBCPの第一歩なんです。継続する必要のない会社なら、BCPを策定する必要はないはずですから。」

「なるほど、そういうことか。事業継続の理由が必要で、それが理念だということだね?」

「ご明察です。BCPを策定するのはけっこう面倒な作業なんです。理念がなければ中途半端なものになるでしょう。まず、そこから固めていきましょう。」

「よし、100年続く理念を考えよう。手伝ってくれるよね。」

「もちろんです!」

金太郎は、多くの会社があらためて自社の企業理念を問い直し、復興に向けて努力する近い将来の日本を想像し、胸が熱くなるのであった。

まとめ

・未曽有の危機的状況だからこそ、理念と意志のある経営者の会社が評判になる。

・BCPを策定することは、安心して取り引きができる会社だというお客さまの評価につながる。加えて、BCP策定は自社の企業理念を見つめ直す機会にもなる。

参考文献

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

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