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TOPコラムおたすけコンサルタント亀田金太郎が行く > 第9回 海外進出、はじめの一歩(1)~市場の検討、海外進出、中小企業白書~

第9回 「海外進出、はじめの一歩(1)」~市場の検討、海外進出、中小企業白書~

内需の大幅な拡大が見込めない中で、アジアを中心に海外進出を果たす中小企業が増えています。今回は、海外進出にあたって最初に検討すべき「事業ドメイン」について考えていきましょう。



事業ドメインとは?

東京都A区にある社員20名の町工場、大木製作所(仮名)の社長、大木太一(仮名)はこう切り出した。「金太郎先生、電話で話したように、今日は海外進出について具体的に検討したいんだ」

太一の息子、専務の寛太(仮名)がうなずく。前回、亀田金太郎が訪問したとき、社長は海外販売の意思を表明していた(第7回参照)

金太郎が答える。「海外進出でも新事業開始でも、考え方は基本的に同じです。最初に事業ドメインを決めることが重要です」

「事業ドメインって何だい? 俺はあんまり横文字は得意じゃないんだよ」

社長が少し不満そうなので、金太郎が急いで説明する。
「失礼しました。事業ドメインというのは、会社が事業活動を行う基本的な領域のことです。これには3つの要素があります。それはですね…」
金太郎の説明を、部下のITコンサルタント、美咲いずみがホワイトボードにまとめた。

 <事業ドメインの3要素>
 1.市場     どこで誰にどれだけ売るか
 2.ニーズ  何を売るか
 3.差別化  どのようにして他社以上に顧客を満足させるか


「その3つを考えて、“選択と集中”をしないといけないということですね?」専務が引き取る。

「そのとおりです。“選択と集中”は事業ドメインを決めるうえで最も重要なことです」と金太郎。

最初に市場を検討する

社長が少し身を乗り出して言った。
「じゃあ、順番に考えていこうか。まずは市場だね」

「はい、前回お邪魔した時はアジアということでしたね。今のところアジア以外の選択肢は考えなくていいでしょう」金太郎も具体的な話に入っていく。

「初めに、輸出なのか直接投資なのかを決めないでいいのでしょうか?」専務が質問した。直接投資とは現地に拠点を置く(現地法人を設立する)こととほぼ同じ意味である。

「それはおいおい考えましょう。どの国に進出するかを決めるのが先です。それによって輸出と直接投資のどちらがいいか変わってくることがありますからね」金太郎の答えに寛太専務がうなずく。

「市場調査をして有望な国を探すというのはどうだろう」社長が提案した。

「市場調査は必要ですね。しかし何か国も調査するのは費用的に大変です。無料で入手できる情報を基におおまかに決めたうえで調査会社などに依頼するほうがいいと思います」
3人は進出先について検討を始めた。いずみは黙って聞いていた。

インドネシアが有望?

中国、インドのほか、タイ、マレーシア、ミャンマーなどが候補に上がった。しかし社長はあまり魅力を感じなかったようだ。専務は、海外進出は父親の最後の夢だと思っている。中小企業は経営者の強い意志によって道が開かれる。専務はそういう場面を何度も見てきた。社長が本気になれるかどうかが肝心なのだ。だから専務は社長の直感に従おうと考えていた。

「ちょっとよろしいでしょうか?」いずみが手を挙げた。金太郎が目で促したので、「最近テレビ番組で観たんですが、インドネシアも有望のようです」

「ほう、どんな点がいいんだろう」社長が聞く。

「はい、まず人口が多いことです。2010年時点で約2億4千万人は世界第4位です。それから、2002年以降4~6%台の安定した経済成長が続いています。経済規模はタイの2倍、ASEAN(注)の中で最大だそうです」

「へえ!」社長は驚いた様子だ。

「その国の貧困層が、いま急激に中流へと移行しようとしているというんです」
いずみの説明を社長と専務がうなずいて聞いている。

いずみが気をよくして続ける。
「そのほかに、日本に対する好感度が非常に高いこともあります。インドネシア人は、ある世論調査(2009年)で選んだ世界主要国のうち、なんと日本への好感度が最も高いんだそうです」

「そりゃいい、インドネシアにしよう!」社長が大声を上げた。

「待ってください」金太郎が制止するように手を上げた。「いいことばかりではないはずです。リスクやデメリットも検討しないといけません」

「すまんすまん、ちょっと興奮してしまったね」

  • (注) ASEAN(東南アジア諸国連合)はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアの10か国から成る。

リスクやデメリットも検討

「まずは、一般的なリスクです」
金太郎はいつものように『中小企業白書(2012年版)』を取り出した。
「前回は2011年版を使いましたが、あれから2012年版が公開されました。海外進出に関してさらに充実した内容になっています」

金太郎は104ページの「第2-2-36図 現地法人が直面している事業環境面の課題・リスク」(P104)を示した。「これは現地法人の場合ですが、項目を見ていただければ分かるように、人材関係を除けば、輸出の場合にも同じリスクがあります」

「なるほど。まあ、今の段階ではどちらかに決めないほうがいいだろうが、現地法人を作るという前提でちょっと検討してみようよ」社長が議論の方向性を示した。

「国別の課題・リスクも出ています。インドネシアもありますよ」金太郎は105ページの「第2-2-37図 国別の生産拠点が直面している事業環境面の課題・リスク」を示した。

「人件費上昇や人材確保については、中国やベトナムでは大きな課題となっており、タイやインドネシアでも比較的上位に挙げられている。フィリピンでは、人件費上昇は大きな課題でないが、人材確保には課題がある。法制度等の不明瞭さなどは、中国、ベトナム、インドネシアで上位に挙げられている。また、ベトナムやインドネシアは、物流や産業インフラにおける課題が比較的高くなっている」

 それを読んだ社長が言う。「言葉の問題はどうだろう、その図の項目にはないようだね。インドネシアの公用語はインドネシア語だったと思うんだけど、日本人で話せる人は少ないよね」

「それは英語が通じるからではないでしょうか。インドネシアの教育では第一外国語が英語で、海外からの観光客も多いということが影響しているようです」いずみもよく調べているようだ。

「直接投資の場合ですが、インドネシアに生産拠点を持つデメリットとしてこんな問題もあるようです」金太郎は107~108ページの「コラム2-2-5 直接投資先から国内への資金還流に係る規制・障害」を示しながら続けた。

「インドネシアの現地法人から技術移転料などのロイヤルティーを受け取るのは難しいようだね。そこには出てないけど、配当の受け取りは問題ないかもしれない」

「そうですね。そのあたりは、調査会社などを通じてもっと裏を取るべきだと思います」

「うん、そうしよう」と答える社長は、だんだんと具体的なイメージが浮かんできているように見えた。

リスクを逆にチャンスと捉える

社長が話を続けた。「106ページのコラム2-2-4にはこう書いてあるね。『国内本社の利益回収状況について、日本側出資者向け支払額(中央値)を見てみると、タイ、インドネシア、シンガポールに現地法人を保有する企業の利益回収額は大きい』だから有望なのは間違いない。それに、さっき金太郎先生が白書から引用した『ベトナムやインドネシアは、物流や産業インフラにおける課題が比較的高くなっている』(106ページ)というのが実は気に入っているんだ」

「どういうことですか?」いずみが尋ねた。金太郎はうなずきながら微笑んでいる。

「インドネシアは経済成長をしながらも、インフラが整備されていないということだろう?ということは、インフラを急速に整備しないといけないということだから、われわれのような製造業には大きなチャンスがあるってことだよ。東京オリンピックの頃のようにね」社長は自分の若い頃を思い出していた。オリンピックの準備で沸き立つ1963年(昭和38年、オリンピックは翌年)、社長は高校生だった。

「よし、当面の調査対象はインドネシアということにしよう」社長はこう宣言して、さらに続ける。「誰にという点については、とりあえずは現地のインフラ整備の関係会社、おそらく建設業とか物流業者になるだろうね。どれだけ売るかは市場調査の結果を見て決定しようじゃないか」

(次回“ニーズ”検討に続く)

まとめ

・海外進出など新規事業について検討するときは、最初に事業ドメインを検討する。

・事業ドメインとは、会社が事業活動を行う基本的な領域のことで、市場・ニーズ・差別化の3要素がある。

・市場を検討するにあたっては、メリット・デメリットの両面を考える必要がある。また、特に海外の場合には、調査会社に市場調査を依頼するなど
  慎重に進める必要があることは言うまでもない。

参考文献

いずみの目

会社の世代交代ってドラマがありますね。最近、わくわくしながら大木製作所を訪問している、美咲いずみです。
大木製作所がこの先どうなるかはまだ分かりませんが、海外に生産や販売の拠点を持とうと考えている中小企業は多いんじゃないかと思います。
初めての海外進出に欠かせないのがコンサルティングサービス。そうした既存のノウハウは有効に活用するべきですよね。こちらのページを見ていただくと、どういうフェーズとステップで考えていったらいいかがまとまっていて便利ですよ。

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

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