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第12回 緊急時に会社を守るために(1)~BCP~

2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、改めてBCP(事業継続計画)が注目されています。ある会社でしか作れない部品の供給が止まり、世界中で製品の生産がストップするという事態が発生したからです。

一方では、速やかに生産を再開させ、シェアを大きく拡大する会社もありました。サプライチェーンの中で中小企業が重要な役割を果たしていることも再認識されました。取り引きの条件としてBCPが明確になっていることを挙げる企業も増えており、中小企業においてBCPの有無は死活問題となりつつあります。

今回から3回にわたって、BCPについて考えていきましょう。



何から始めればいいか分からない

「もう待ったなしなんだけど、BCPの策定なんて言われても、何から始めればいいか分からなくてねえ」
愛知県の自動車部品製造会社、山本スプリング(仮名)の社長、山本一郎(仮名)はこう切り出した。

従業員150人の山本スプリングは、他社では作れないと言われている高品質のサスペンション(振動を吸収する自動車部品)“ヤマサス”(架空の製品)を主力商品にしている。山本社長が「待ったなし」と言ったのは、最近、主要取引先である大手自動車メーカーの調達担当者から、今後はBCPを策定していない会社との取り引きを徐々に減らしていく計画があると聞いたからだ。

そこで山本社長はBCPを策定することにしたのだが、どうすればいいのか全く分からない。仲間うちの会合でその話をしたところ、静岡県で部品販売を営む宮本金属加工(仮名)の宮本太一(仮名)社長がBCPを策定した経験があると言う(第5回参照)。宮本社長は「いいコンサルタントがいるんだ」と言って経営コンサルタントの亀田金太郎のことを教えてくれた。

そういうわけで山本社長は金太郎とコンサルタント契約を結ぶことにし、金太郎とITコンサルタントの美咲いずみのコンビが山本スプリングにやってきたのである。

BCPがなければ競合に負けるかもしれない

「2011年の東日本大震災以来、自社のサプライチェーンの全体像を把握している会社が増えました。その流れの中でBCPが重視されているんですね」山本社長がBCPの策定を思い立った理由を聞いて、金太郎が言った。

金太郎は、持参したノートPCで『中小企業白書 2012』の62ページを開き、「第2-1-14図 サプライチェーンの全体像を把握する取組(大震災以降)」を示した。同図によると、大企業では、震災前に自社のサプライチェーンを把握していたのは3割に満たなかったが、震災後には約46%に増えている。調査を予定している企業も含めると73%になる。

大企業がサプライチェーンの全体像を把握する目的は、大災害などの緊急事態が発生したときに自社の生産が止まらないか、止まるとしたらどのぐらいの期間になるのかを把握することである。当然、個々の取引先の事業継続性がチェックされ、問題がある企業との取り引きを減らしたり、停止したりする措置が実施される。それを示しているのが「第2-1-15図 納入先の取引傾向(大震災以降)」(『中小企業白書 2012』63ページ)である。海外調達を増やしたり、調達先を分散したりする傾向がはっきりと分かる。独自技術で高いシェアを誇る山本スプリングも、他社にシェアを奪われる可能性は十分にあるのだ。

そこでいずみが、疑問に思っていたことを聞いてみた。「御社は他社がなかなか作れない製品を作っていると聞いています。BCPがなくても取り引きは減らされないのではないでしょうか?」実際に「第2-1-16図 自社製品等の代替可能性とBCPの取組状況」(『中小企業白書 2012』63ページ)を見ても、代替できない、あるいは代替が難しい製品を作っている会社ではBCPの策定に取り組んでいるところは少ない。

「ああ、“ヤマサス”のことだね」山本社長が答える。「それしか作っていなかったらそう考えたかもしれないね。しかしうちはほかの部品も作っていて、そっちのシェアが落ちるのは結構インパクトがあるんだよ。それに、“ヤマサス”の供給に不安があれば、“ヤマサス”でなくてもいいという話になるかもしれない。競合が“ヤマサス”に近い性能のサスペンションを出してきて、しかもその会社がBCPを策定しているとなると、大幅にシェアを奪われることになりかねないね」

“ヤマサス”は高級車レベルの性能を低価格で実現したサスペンションで、多くの大衆車で採用されている。それを可能にしているのは、山本スプリングが数々の特許を取得した独自の製法である。しかし、山本スプリングがBCPを策定していなかったら、BCPを策定済みの会社の製品に替えられるかもしれない。チェンジコスト(取引先を変更することで発生するコスト)をかけてでも供給の安定を図る企業が震災後、増えているからだ。

われわれは社会に対して責任がある

「ここでBCPを策定することによって、逆にポジションを盤石にできると思います」と金太郎。彼が指し示したのは、「事例2-1-14 大震災当時、BCPの策定によりスムーズな復旧を実現し、顧客流出を防いだ企業」(『中小企業白書 2012』64ページ)である。

「『顧客流出を防ぐ』というBCP策定の目的に基づき、被災翌日から取引先顧客へ連絡を取り、同社の被災状況を説明することで、理解を得ることに努め、被災12日後には、生産能力80%での操業再開を実現し、顧客流出を防ぐことができた」山本社長は声に出して読み、「まさに、これが狙いなんだよ」と付け加えた。

金太郎は深くうなずいた。「BCPの策定は、それ自体が目的ではありません。災害などが起きたときに途絶えることなく製品を供給し続けるためにBCPを策定するわけです。ですから、BCPの策定は社会的な責任を果たすことだと思うんです。特に、代替品が存在しない製品を作っている企業にとってはなおさらです。その結果として顧客の流出も防げるということなんですね」実際、BCPの策定はCSR(企業の社会的責任)の一環と言われる。

「うん、そうだ。われわれは社会に対して責任がある」と山本社長は胸を張った。

それを目にしたいずみも、同感といった様子で大きくうなずいた。

“ひな型”を利用すれば簡単にできる

「さて、本題のBCPをどう策定するかですが、それにはいい“ひな型”があるんです」
金太郎は『中小企業白書 2012』の66ページを開き、「コラム2-1-12 中小企業のBCP策定支援ツール」を示した。
「目玉は『中小企業BCP策定運用指針(第2版)』 です。これと中小企業庁が用意した記入シートを使えば、BCPを策定できるようになっています。
なお、中小企業庁では“BCPの策定と運用”という言葉を使っています。一般的には、策定された成果物をBCP、BCPに従って平時から必要な運用を行うことをBCM(事業継続マネジメント)というようです。われわれもこの用法に従うことにしましょう。」

「第2版ということは、第1版があったということだね?」

「はい。第1版は2006年に作成されましたが、あまり参照されなかったようです。ところが東日本大震災によってBCPの重要性が増し、日本中の中小企業で策定する必要があるということになりました。そこで、小規模事業者を含めた初心者を念頭に入門コースを新たに加えるとともに、業種別の事例を追加するなどの改訂をしたとされています」

「だから、“誰でも策定できる”ということなんだね?」

「おっしゃるとおりです。“ひな型”にある項目を埋めていけばBCPを策定できるようになっています。もちろん、まだ決まっていないことは決めなければいけませんが」

情報システムのBCPも大切だ

「まずは、入門コースの記入シートを見てみましょう。事業継続計画書の記入シートは、中小企業庁のホームページからダウンロードできるようになっています」と金太郎。

山本社長は入門コースの記入シートを見ながら、「なるほど、この水色の部分を埋めていけばいいんだね。これなら難しくない」と喜んだ。

「BCPに何を書くのかを自分で考えるのでは、なかなかうまく書けないでしょう。いちばん手間のかかる部分がすでに出来上がっていると言えます。自社に固有のことだけを加えていけばいいようになっているんですね」と金太郎。「ところで美咲さん、情報システムの面で付け加えることはある?」

「そうですね、代替センターのことも付け加えておいたほうがいいかもしれませんね」

「なるほど。具体的に説明してみて」

「少し前に“コンティンジェンシープラン”(不測の事態への対応計画)という言葉がはやったことがありました。これは今のBCPの一環と考えればいいと思います。“コンティンジェンシープラン”では、東京の会社であれば西日本というように、遠く離れた場所に非常時の代替システムを構築するというものが多かったようです」

「なるほど、代替センターか。うちもデータセンターにサーバーを預けているけど、代替センターも検討しないといけないかなあ」と山本社長。

「データセンターを利用するほかに、最近ではクラウドサービスで代替センターを構築する方法もあります。BCPとは少し違った観点ですが、情報システムでは機器やソフトウェアの資産管理も必要です。技術進歩が早い情報機器の管理や、バージョンアップが頻繁に行われるソフトウェアの管理を効率化する資産管理ソフトの導入なども、この機会に検討されたほうがいいかもしれません」いずみは張り切って説明した。

「やることがたくさんあるんだなあ…」山本社長が少し顔をくもらせた。

それを見た金太郎が元気づけるように言う。「まず、記入シートを埋めてみましょう。それだけでも、かなり大きな前進になることには間違いありません。資産管理ソフトの導入などは事前課題として挙げておいて、具体的な対応は現場に任せるということでもいいと思います」

「なるほど、それでいいんだね。よし、それでは入門コースを埋めていこう。一緒に考えてくれるよね?」

「もちろんです!」金太郎といずみは声をそろえた。

まとめ

・BCPの策定は、供給停止を起こさないという社会的責任を果たすことにつながる

・BCPの策定は、顧客(取引先)の流出を防ぐことにつながる

・『中小企業BCP策定運用指針』を参照しながら、中小企業庁が用意した記入シートを活用すれば、比較的簡単にBCPを策定することができる

いずみの目

BCPの重要性を改めて認識した美咲いずみです。
東日本大震災が発生した時、計画停電の時間になってもうっかりPCを使っていたら、突然電源が切れてハードディスクが壊れてしまったことがあります。データはバックアップを取っていたので被害は少なかったのですが、「バックアップがなかったら」とひやっとしました。
代替センターの件ですが、普段はバックアップセンターとして活用することで平時のコストを抑えるサービスもあるようです。社内環境のバックアップもできるようですから、ご検討されてはいかがでしょう。

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

*この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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