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第17回 会社に技術を残すには?~技術・技能の継承、人材育成~

高齢化の進行に伴い、ベテランはたくさんいるが若手が少ないという企業が増えています。これは特に中小企業で顕著のようです。このような状況で、多くの中小企業が技術や技能の継承に課題を感じています。技術や技能の継承が不十分なことが技術競争力の低下につながっているというのです。これにはどのような対策があるのでしょうか?



仕事を断ることが増えてきた

「人がいなくてね、最近は仕事を断ることがあるんだよ。今のところそれほど数は多くないけど、このまま放っておくと取り返しがつかなくなるような気がするんだ。」

静岡県で部品販売会社、宮木金属加工(仮名)を営む宮木太一(仮名)社長はこう切り出した。

宮木金属加工では、経営コンサルタント亀田金太郎のアドバイスで人手不足を外国人労働者の採用で補っている。また金太郎の助手でITコンサルタント美咲いずみの提案でEラーニングも実施している(第6回参照)。

「人手は足りているんですよね?」と金太郎。

「うん、社員の数という意味ではね。ただ、難しい技術になるとベテランに仕事が集中してしまって、ベテランの手が空くまでは仕事を断らないといけないというケースがあるんだよ。」

「技術継承の問題ですね。多くの企業で課題になっています。」

技術競争力が低下している

金太郎は『中小企業白書 2012』を取り出して145ページを開いた。2つの図が載っている。

「まず、『第3-1-7図 技術競争力の位置付け(5年前との比較)』を見てください。昔であれば、5年前と比較したら技術競争力が高まっていると答える会社が大半だったと思うんです。しかしこの図を見ると、『やや高まっている』と『高まっている』を合わせても全体の3分の1に過ぎません。現状維持が5割です。『やや低下している』と『低下している』を合わせると2割弱ですが、これでも私には多いと感じます。」

「ふーむ。うちも『やや低下している』かもしれないなあ。」

「低下していると答えた会社がその理由として挙げている項目が次の『第3-1-8図 技術競争力が低下している理由(複数回答)』です。」

69.6%の企業が「技術・技能継承がうまくいっていない」ことを理由に挙げている。ほかには、「海外企業等の技術力向上」(16.2%)、「技術流出により同一技術を他社が保有」(13.0%)など、他社の技術競争力が高まったこと、「機械化・IT化進展による技術の一般化」(12.2%)、「機械化・IT化への対応が遅れた」(10.7%)、「代替技術が出現した」(7.5%)など技術革新に関係する理由が挙げられている。

「うちはどれも少しずつ当てはまるよ。しかしベテランに仕事が集中するということは、やっぱり技術継承がうまくいってないということなんだろうねえ。」

対策は標準化と教育と評価

「肝心の対策ですが、146ページの『第3-1-9図 技術・技能承継の取組実施度』を見てください。技術継承がうまくいっている企業とそうでない企業の差は取り組みの違いにあるということがはっきりと分かります。」

まず、「熟練技術・技能の標準化・マニュアル化」と「熟練技術・技能の機械化・IT化での代替」という項目で大きな差がついている。特に標準化・マニュアル化の効果が絶大であることがグラフから見て取れる。また、うまくいっている企業は、OJT、off-JTに関わらず教育に力を入れていることも分かる。

もう1つ、特筆すべきなのは評価制度の差である。資格・認定制度による評価、目標管理、職能給などによる処遇の充実などが、継承していく側のモチベーション向上に一役買っているようだ。

逆に差がない項目が「定年延長」である。ただし、うまくいっている企業は延長した分を若手の教育に充当しているが、うまくいっていない企業は技術継承を先延ばしするために利用しているのではないかと推測される。

「熟練技術・技能を要する業務の外部委託」は、うまくいっていない企業のほうが多くなっている。これは注意しなければならない点である。自社の強みでない技術であればいいが、そうでなければますます技術競争力が失われていく。

「外部企業等との連携」が、うまくいっている企業のほうが多くなっていることは意外に見える。しかし、強みに集中したうえでそうでない部分を他の企業と補い合っていると考えれば納得がいく。

「やっぱり地道な取り組みが重要なんだね。うちも今日からでも取り組むことにするよ」と宮木社長。金太郎もうれしそうにほほえむのだっだ。

サポイン事業で技術・技能をデータベース化

金太郎はさらに続ける。

「技術継承に関しては政府も問題意識を持っていて、サポイン事業という取り組みをしています。」

サポインとはサポーティング・インダストリーを略したもので、「戦略的基盤技術高度化支援事業」のニックネームだ。

サポイン事業は、「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律(中小ものづくり高度化法)」に基づき、鋳造、鍛造、切削加工、めっき等の中小企業のものづくり基盤技術の高度化に寄与しようというもので、経済産業大臣の策定した指針に適合していると認定された研究開発を行う中小企業は、低利融資等の支援を受けることができる(詳細は『中小企業白書 2012』147ページの「コラム3-1-1 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律及び戦略的基盤技術高度化支援事業」参照)。

「サポイン事業を活用して技術・技能をデータベース化した事例が載っています。北海道室蘭市の株式会社キメラです。」

金太郎は『中小企業白書 2012』148ページの「事例3-1-5 サポイン事業を活用し、金型の高精度化・微細化に成功した企業」を示した。

この事例によれば、「これまで熟練技能者に蓄積していた型彫放電加工、ワイヤーカット放電加工、高速切削加工の最適加工条件等のノウハウを、誰でも活用できるようデータベース化した。その結果、材質・硬度・加工面の面積・加工方法等の加工に必要な諸データを入力すると、最適加工条件を出力することができるようになり、納期の短縮にも大きく貢献している」という。

「おお、うちがベテランに頼っているのもこういう技能だよ。なるほど、こんなことが可能なのか。」

宮木社長は、どうやら光明を見出したようだ。

社を挙げた人材育成の取り組み

「もう1つ事例を見てください。血の通った人材育成の取り組みについて書かれています。」

金太郎が示したのは150ページの「事例3-1-6 綿密な人材育成計画を社内全体で共有し、社を挙げて人材育成に取り組む企業」である。

めっき加工を営む東京都品川区の株式会社三ツ矢の事例である。「同社の現場社員から構成される検討委員会では「めっきができるとは?」からスタートし、専門知識と実技から成る資格認定制度を設け、実力を客観的に評価する工夫をしている。専門資格の認定は、手当にも反映されるため、社員は、高いモチベーションで自己研さんに励み、結果として、同社の技術力が高まることにつながっている」という。
また、「近年では、新入社員研修にジョブローテーションを導入し、今後は、熟練技能者向けの「教える側の教育」も検討している。将来的には、社内人材を磨き上げる育成力を同社の強みとすることを目指している」ともいう。

金太郎は言う。「『教える側の教育』というのは重要なことですね。私の知人に営業コンサルタントがいます。彼がある大企業で営業の基礎研修の講師を務めたんですね。終わってからの懇親会で、研修を見ていた営業本部長に『あなたの教え方はとても分かりやすいけれども、内容は営業の初心者向けで、あれなら社内でも教えられそうだ』と言われたんだそうです。彼はそれに対して『そうなんです。本当に初歩的な話なんです。でも、御社の誰も若手に教えてこなかったことなんですよ』と、にっこり笑いながら答えたそうです。」

宮木社長は黙ったままうなずいた。

金太郎が続ける。「相手もすぐに理解したらしく、『そのとおりだなあ、仕事ができる人ほど教えるのが下手だというのは、うちにも当てはまるわけだ』と言ったそうです。」

「分かるなあ、その話。ベテランになるほど、人ができないということが理解できなくなってしまうんだよね。自分だって最初はできなかったはずなのに、それをつい忘れてしまう。だんだんとできるようになったはずだけど、その過程を記録している人はほとんどいない。人に教えるためには、教え方を考えることは必要だけど、自分はどうしてできるようになったかという自己分析が大切なんだね。」

「はい。分析して言語化し、全社で共有することが人材育成の本質なんです。ナレッジマネジメントと言われているのがこれです。知識の共有をマネジメントするということですね。そのためには、ベテランが持っている暗黙知を、誰でも分かるように言語化された形式知にしなければなりません。教える側の教育をすることは、暗黙知を形式知にすることと一緒なんです。」

「ナレッジマネジメントね。言葉は知っていたけど、とても難しいことだと思っていたよ。」

「はい、本質的だからこそ難しいということはありますね。時間もかかるし、本気で取り組む必要があります。」

強みに集中していく必要がますます高まる

「美咲さん、何か付け足すことはありますか?」

金太郎はいずみに水を向けた。以前なら、こういう「ムチャ振り」に慌てたいずみだが、最近はそれを予想してしっかり準備しているようだ。

「はい、技術・技能の継承に全社を挙げて取り組むということは、自社の強みに集中することと同じだと思います。」

宮木社長も金太郎もうなずいている。いずみは続けた。

「別の言い方をすると、自社の強みにつながらない業務を続ける余裕はどんどんなくなっているということでもあると思うんです。」

「確かに、何でもかんでも社内でやるのは無理になっていくだろうね。お互いの専門領域を尊重し合った連携をして、社会全体で生産性を高めるということをやらないと日本の将来はないかもしれないな。お互いにアウトソーシングするような連携が必要だね。」

「そのとおりだと思います。連携相手と相互にBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)を行うようなことが、これからは必要ではないでしょうか。」

「相互BPOというのはおもしろい発想だね。元請や下請という関係はなくならないかもしれないけど、それとは別に、上下関係ではなくネットワーク的な企業連携が今後は増えていくかもしれないね」宮木社長は納得の表情で美咲を見た。

技術や技能の継承から未来の企業連携の話にまで広がったが、金太郎には必然的に感じられるのだった。いずみも少し自信を深めることができた。何よりも宮木社長が元気になってきたことがうれしかった。

まとめ

・技術競争力が低下してきたと感じている会社が増えている

・技術・技能の継承がうまくいっていないことがその理由とする会社が多い

・技術・技能の継承のポイントは、標準化・教育・評価の3つ

・自社の強みを継承していくために、今後は自社の強みでない部分を外部に委託していく必要がますます高まる

いずみの目

最後に金太郎先生に「ムチャ振り」されましたが、このところBPOについての話が多かったので落ち着いて対応できました。

今まで当然と思って自社でやっていた業務も、自社の強みに関係しない業務であれば、他社に委託できないかを検討してみてもいいのではないでしょうか。例えば、こんな業務委託はどうでしょうか? 

・メーリングサービス
大量プリントサービスと連携、メールシーラ加工、封入封かん、郵便局持込みなどを代行。

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

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