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第22回 東日本大震災に負けない会社に学ぶ(2)~企業再建~

東日本大震災という未曽有の災害にも負けずに、再興している企業はいくつもあります。中には、いったんは廃業を決意した会社もあります。再興を遂げた企業のプロフィールはさまざまですが、そこには共通した成功要因があります。前回に引き続いて、その成功要因について考えていきましょう。

* 本文中の登場人物・企業名はすべて架空のものです。ただし、事例はすべて『中小企業白書 2012』に掲載されたもので、団体名・企業名・地域名などは実在のものです。



休憩後、セミナーを再開

セミナー「東日本大震災に負けない会社に学ぶ」は10分間の休憩が終わり、金太郎は講義を再開した。

「東日本大震災は、人的にも経済的にも未曾有の災害でした。しかし直接の被害に遭っても再生を果たした会社や団体はたくさんあります。それらの事例では、大きくは4つの成功要因と12個のキーワードがありました(図1)。ここからは、それについて詳しく見ていくことにします。

図1

復旧・再建のための4つの成功要因

公共の支援を受けるためのハードルを乗り越えるには

「まず支援について見ていきましょう。4つのキーワードがあります。公共の支援、産学官連携、地域連携、外部支援の4つです。まずは公共の支援についてです。」

いずみがスライドを映し出す。

「公共の支援というと“ばらまき”みたいな話かな?」と花村喜多男社長が訊ねる。

「それがそうではないんです。そもそも震災前の政権の大きな課題は、政府の財政をどう健全化するかということでしたから、“ばらまき”的な支援策は行いにくい状況でした。」

まず、2011年12月26日に「東日本大震災復興特別区域法」が施行された。これは「震災により一定の被害を生じた区域において、規制・手続の特例や税制、財政、金融上の特例をワンストップで総合的に適用する仕組み」である。(『中小企業白書 2012』59ページ「コラム2-1-10」)

予算措置のある施策には、「仮設工場・仮設店舗等整備事業」と「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」がある。

これらのねらいは、まずは中核的な産業や企業を復興させ、他の産業や企業に追従させるということである。すべての企業や団体に補助金を出していたら、いくらお金があっても足りない。まずはトップランナーを支援して環境が整えば、あとは自助努力でやってもらおうという考え方である。

「ですから、特に『中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業』の認定を受けるのはハードルが高いんです」と金太郎は言う。

例えば、宮城県石巻市では、2011年6月の1次募集に水産業関連の24グループが個別に応募したものの、採択されなかった。そこで、水産加工業者138社と関連産業の72社が一体となってグループを形成し3次募集に応募したところ、同年末に採択が決まった。(事例2-1-7)

「仮設工場・仮設店舗等整備事業」のほうは「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」ほどハードルは高くないようだが、理念や使命感を問われるケースが多いように見受けられる。

福島県いわき市の「くんちぇ広場ならは」の事例では「仮設住宅に入居している高齢者のためにぜひ取り組んでほしい」という楢葉町役場の要請を受ける形で、同事業の認定を受けている(事例2-1-6)。町役場の要請があったとはいえ、経営者の使命感がなければ実現しなかったことであろう。

宮城県名取市の株式会社ささ圭の事例では、社屋・工場・本店のすべてが流失し、従業員3名が亡くなったうえ、社長・会長宅まで流されるという被害でいったんは廃業を決意した。しかし、市役所で「雇用を確保できなくなれば、地域全体の復興が遅れてしまう」と言われ、再建を決意。市役所の助言や補助を受けて再建を果たした。(事例2-1-9)

「したがって、公共の支援を得るには、先導者として他の事業を引っ張っていく決意や能力があるか、世のため人のために頑張ろうという使命感があるかが重要だということなんです」と金太郎はまとめた。

なお、産学官連携も補助金が受けられることが多いので、公共の支援の一形態といえる。こちらについては、高い技術力(事例2-1-1)や先進的なビジネスモデル(事例2-1-12)があって初めて受けられるが、自社のノウハウを公開する必要もあるので、やはり使命感がないと難しいと金太郎は言う。

産学官連携に近い事例では、独立行政法人日本原子力研究開発機構の除染技術実証試験事業に採択された、福島県いわき市の志賀塗装株式会社の事例がある。これも地域住民の不安を軽減したいという、同社の思いが結実したものである。(事例2-1-2)

相互支援の考え方が重要

「このセミナーに参加されている方の中には、青年会議所や商工会議所の会員の方も多いと思いますが、それでも普段は地域のありがたみを、それほど意識していないのではないかと思います。」

金太郎は話題を地域連携に変えるにあたって、こう切り出した。

「ですが、災害時にこれほど頼りになるものもありません。多くの人が同じ境遇になるので、深い共感と絆が生まれるからです。」

しかし“もたれ合い”では地域の力は生まれない。そこにも使命感と、それに基づく相互支援の考え方が必要だと金太郎は力説する。

例えば、岩手県大船渡市の有限会社三陸とれたて市場は、三陸の水産業全体が一体となって復興しなければ、自社だけが再建しても意味がないという思いから、地域連携を始めた。地域全体で取り組める仕事を作ることで、共に力を合わせて再建しようという考え方である。(事例2-1-3)

また、宮城県南三陸町の株式会社ヤマウチの社長は、自宅が流失したため避難所に身を寄せながらも、地元の商店街が「手を取り合い、共に地域で商売を再建するための復興のシンボルとなるイベント」を企画した(事例2-1-4)。

このような事例は枚挙にいとまがない。宮城県気仙沼市の「復興屋台村気仙沼横丁」(事例2-1-5)、福島県須賀川市の須賀川中央商店振興組合(事例2-1-8)、宮城県石巻市の雄勝硯生産販売協同組合(事例2-1-11)のほか、すでに挙げた福島県いわき市の「くんちぇ広場ならは」(事例2-1-6)、宮城県石巻市の水産業関連グループ(事例2-1-7)、宮城県名取市の株式会社ささ圭(事例2-1-9)、宮城県仙台市の株式会社舞台ファーム(事例2-1-12)も地域の相互支援を目指した事例と言えるだろう。

「自社だけが再建してもしかたがない、地域全体が再建しなければ明日はない。そのためには地域全体が共存共栄できることを考える。それが再建への大きな原動力になるんです」と金太郎がまとめる。

外部から支援されるためには普段からの取り組みが大切

「支援の話の最後になりますが、外部の支援について、続けてお話しします」と金太郎。

宮城県南三陸町の株式会社ヤマウチの山内社長が企画した「復興市」は、阪神淡路大震災の被災経験を生かして2008年に設立された「全国ぼうさい朝市ネットワーク」が支援した。同じ経験を持つ仲間が支援してくれた事例である。(事例2-1-4)

「復興屋台村気仙沼横丁」の事例では、以前から行われていた「街なか養蜂」を通じて街の活性化に取り組む「仙台ミツバチプロジェクト」のメンバーが全国に支援の輪を広めていった(事例2-1-5)。

石巻市雄勝地区の雄勝硯生産販売協同組合の事例では、国内外から義援金が寄せられたと書かれている(事例2-1-11)。これは、国内産約9割のシェアと約600年の歴史を持つ雄勝硯(すずり)の伝統を守りたいという気持ちによるものだろう。

「とにかく義援金を、というような対象の広い応援とは違って、直接外部からの支援を受けるためには、普段の取り組みが大事だということですね。地域を超えたコミュニティーに加盟したり、守りたいだけの何かを持つように努力したりすることが大切です。誰だって全員助けたいと思うものではありますが、人・物・金・時間のどれをとっても限りがあるので、どうしても選択しなければならない。そのときに選ばれる理由がないと、支援を得ることの期待はできないということです。」

製品力は先端技術だけにあるのではない

「次に第2の成功要因である製品力の話に移ります。先端技術があれば強いのは確かです。」

その事例の筆頭が、福島県会津若松市の株式会社ピーアンドエム(事例2-1-1)だという。同社は、福島県の産学官連携プロジェクトである「うつくしま次世代医療産業集積プロジェクト」に参加している(『中小企業白書 2012』コラム2-1-4)。

「ピーアンドエム社が作っているのは、走査型ハプティック顕微鏡と呼ばれるものです。顕微鏡で見たものの硬さを定量的に表示してくれるもので、肝臓や動脈のバイパス手術などで威力を発揮するのだそうです」金太郎が解説する。

「そんな高度な製品をうちは持ってないなあ」と大木太一社長がため息交じりにつぶやく。

金太郎がそのつぶやきに反応して微笑みながら言う。「ピーアンドエム社は、県内の商社と連携して、PR方法や販売方法について検討を重ねるなど、販売力の強化に取り組んでいます。大木社長もがんばらないといけませんね。」

「おっと、これはしまった」と大木社長が言い、場内は笑いに包まれた。

「先端技術を開発できなくても、既存技術の応用を考えることはできます。例えば、いわき市の志賀塗装株式会社では、水を使った高圧洗浄では放射性物質を十分に除染できないので、自動車製造で使われている最先端技術を従来の洗浄技術と組み合わせて、フェイスパックのようにセシウムを剥離する方法を思いつきました。このアイデアが除染技術実証試験事業に採択されたんです。」(事例2-1-2)

「製品力を高めるには、先端技術以外にもたくさん方法はあります」金太郎は続けた。

「付加価値が製品力の本質なんです。いくら先端的な技術でも、人の役に立たないものはお金になりません。逆に、既存の製品でも付加価値があれば高い値段で売れるんです。」

その典型的な事例が、岩手県奥州市の及源(おいげん)鋳造株式会社だという。南部鉄器の製造販売会社だが、表面塗装をしなくても錆びにくい鉄器の開発に成功し、ティーポットやフライパンの製造などに取り組んでいる。海外展開にも熱心で、海外のニーズに応じて多彩なデザインやカラーバリエーションを用意している。(事例2-1-10)

6次産業化など業態見直しも付加価値を生む

「高付加価値という意味では、6次産業化という手段もあります。」

「これは、農業経済学者の今村奈良臣氏の造語で、もともとは1次+2次+3次=6次という意味でした。現在では、足し算ではなく掛け算とされていますが、いずれにしろ、農産物などを生産する1次産業だけでなく、それを加工する2次産業、さらに流通させる3次産業のすべてを一手にやってしまおうということです。つまり、業態を多様化させることで、市場での主導権を握りつつ、ブランド化までしてしまおうという戦略ですね。業態の見直しが付加価値になり得るんです。これは、皆さんにもあてはまるのはないでしょうか。」

参加者は、なるほど、という顔でうなずいた。

「そのほか、地域の資源を活用するのは昔からある手法です。特産品というのは江戸時代からありますからね。今回の震災でも、多くの会社や団体が地域の資源を見直し、それに付加価値を付けることを検討しています。」

1つだけ事例を挙げるとすれば、大船渡市の有限会社三陸とれたて市場(魚介類のネット販売)がふさわしいだろう。同社は震災で事業所も設備もすべて失ったが、1か月後に船を出して刺し網漁を行ったところ、魚が大量に取れることが分かった。地元の漁師らとの連携を進め、出荷の再開にこぎつけた。2011年8月には、鮮度とうまみの保持に優れたCAS(セル・アライブ・システム)冷凍施設を導入し、漁師たちと新たな水産加工品の開発に取り組んでいる。(事例2-1-3)

「長い話になりました。また少し休憩しましょう。休憩後に、残りの2つの成功要因である販売努力と使命感について説明して、全体をまとめたいと思います。」

まとめ

・公共の支援は、まずはトップランナーとなる事業を支援するという考え方なので、支援を受けるのはハードルが高く、使命感を持つことが必要

・地域連携においては、共存共栄を目的とする相互支援の考え方が大切

・外部支援を受けるには、普段からの取り組みが重要

・製品力の本質は、付加価値がどれだけあるかということである。付加価値を付けることを目的とした先端技術の追求、伝統工芸の現代ニーズや、海外ニーズへの対応、6次産業化、新たな特産品の開発を行う。これらはすべて付加価値を高めることにつながる

いずみの目

先端技術だけが製品の付加価値を高める手段ではなく、いろいろな高め方があるということで、セミナーに参加した経営者たちの目も輝いてきたように思います。
高付加価値化に関してはIT企業も取り組んでいます。IT企業が考える高付加価値化とは、ソフトウェアやハードウェアを要件どおりに導入することだけでなく、ITの専門性を保ちつつも、お客さまの課題や悩みについて一緒に考えることを指すのだというのが私の考えです。

グローバルITサービス GNEXT

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

*この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。

* 資料の、無断引用・転載・改ざん・配布および、そのままでの教材としての利用は、すべて禁止します。

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