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第23回 東日本大震災に負けない会社に学ぶ(3)~企業再建~

東日本大震災という未曽有の災害にも負けずに、再興している企業はいくつもあります。中には、いったんは廃業を決意した会社もあります。再興を遂げた企業のプロフィールはさまざまですが、そこには共通した成功要因があります。前回、前々回に引き続き、その成功要因について考えていきます。

* 本文中の登場人物・企業名はすべて架空のものです。ただし、事例はすべて『中小企業白書 2012』に掲載されたもので、団体名・企業名・地域名などは実在のものです。



2度目の休憩後、セミナーを再開

セミナー「東日本大震災に負けない会社に学ぶ」の2度目の休憩が終わり、金太郎は講義を再開した。
「ここまでの話を簡単に振り返っておきます。東日本大震災は人的にも経済的にも未曾有の災害でした。しかし、直接の被害に遭っても再生を果たした会社や団体はたくさんあります。ここまで、4つのうちの2つの成功要因である、支援と製品力について見てきました。これから、残りの販売努力と使命感について考えていきましょう。

復旧・再建のための4つの成功要因

逆境は顧客との関係強化のチャンス

「販売努力としてはいろいろな手段がありますが『中小企業白書 2012』に載っている13の事例からは3つのパターンが抽出できました。顧客との関係強化、営業力強化、海外進出です。これから順に説明していきましょう。」

休憩直後はざわついていた会場も、金太郎が話し始めるとすぐに静かになった。金太郎は参加者全員と視線を合わせるようにして話を続けた。いずみが話に合わせてスライドを進めていく。

「廃業を考えたけれども、お客さまからの応援で再建を決意した経営者は何人もいます。大船渡市の有限会社三陸とれたて市場の八木社長(事例2-1-3)や宮城県名取市の株式会社ささ圭の佐々木社長(事例2-1-9)がその例です。彼らはほとんどすべてを失いましたが、お客さまの励ましのメールや手紙でやる気を取り戻したんです。このようなメールや手紙をもらえたのは、お客さまにファンになってもらえるだけの商品やサービスがあったからなのは言うまでもありません。」

形を変えて再建した事例もある。釜石市で料亭を営み、水産加工品の販売もしていた有限会社中村家は、廃業も検討したが、地域の再建に貢献しようと事業を再開した。料亭経営こそ断念したものの、同社の名物であった商品に注力することにした。それは年間約40万個も売れるほどの人気商品だったため、顧客や取引先からの励ましが多数届いたという。中村社長は「お客さまとの新たなつながりが生まれている。今まで以上に気持ちを込めて商品を作り(中略)、三陸水産業の復興に、中長期的な視点を持って貢献する」と述べている。(事例2-1-13)

顧客との新たな関係を築いたという意味では、いわき市の志賀塗装株式会社の事例もユニークだ。原発事故で2週間の操業停止となり、その後も3か月ほどは「会社としての体をなしていない状態だった」同社は、その後、一人一人の顧客に手紙を出して現状を説明し、今後の対応について選択肢を提示して選んでもらった。

これにより「会社としてやるべきことがようやく見えてきた。大震災は地域とのつながり・絆の重要性を再認識する機会になった」と志賀社長は語っている。(事例2-1-2)

「震災を機会に顧客との関係を見直し、強化することに成功した会社がうまく再生を果たしているようです。しかしながら、災害がなくても顧客との関係は見直せると思うんですね。皆さんの会社も見直しの余地があるのではないでしょうか?」という金太郎の問いかけに多くの参加者がうなずいた。

自社の商品・サービスを知らしめる努力が大切

「皆さんの会社の商品やサービスはどれだけの人に知られているのでしょうか?すでに知られているのならかまいませんが、そうでなければ、知らない人に商品の価値を知ってもらう努力が必要です。」

先端技術を駆使した走査型ハプティック顕微鏡の開発に成功しながら、なおも営業力強化に努める株式会社ピーアンドエムの事例(事例2-1-1)は、まだまだその製品が知られていないという認識があるためだろう。

「これが販売努力の本質であり、そのためにあらゆる手段を使って営業力を強化するわけです。インターネットの活用や、デパートやスーパーなどの大きな流通機構と連携することは有効な方法ですが、それはあくまでも手段に過ぎないと考えるべきでしょう。」

自社商品・サービスの価値を知らしめるためには、まずは自社商品のよさを信じられなければいけないと金太郎は力説する。

「お客さまがいる限り、その商品には必ず価値があるはずです。まずはお客さまに、商品に対してどんな価値を感じているのかを聞いてみましょう。それが営業力強化の第一歩なんです。」

海外進出は販売努力の最たるものの1つだと金太郎は続けて言う。

「先ほど、南部鉄器を作っている及源(おいげん)鋳造株式会社の事例を紹介しました(事例2-1-10)。南部鉄器の会社は、ほかにもたくさんあるなかで、同社が海外で“OIGEN”というブランドを浸透させている理由は何なのでしょうか?」と金太郎は参加者に問いかけた。

「それは、海外に出て行くことで新しいニーズを知ることができるからなんです。それが付加価値の創造につながり、ブランド化につながります。ブランド化が実現すれば、販売は本当にやりやすくなりますからね。もちろん海外進出で市場が広がるということもありますが、それ以上に、異文化に触れて新しいニーズを知ることが会社を一回り成長させる弾みになるんです」金太郎は、このように自答した。

自分のためになら続かないが、人のためになら続けられる

「いよいよ最後になります。4つ目の成功要因である使命感のお話です。私はこれがいちばん重要だと思っています。」

金太郎が言う理由はこうだ。

13個の事例の中で、廃業を検討あるいは決意したという事例が3つある(福島県いわき市の仮設店舗くんちぇ広場ならは、宮城県名取市の株式会社ささ圭、岩手県釜石市の有限会社中村家)。その3つともが、自分ではなく人のために事業を続けてほしいと言われたことで再建を決意しているのだ。

また、ほとんど、あるいはすべての施設や私財を失いながらも会社を再建した経営者も多い(福島県いわき市の志賀塗装株式会社、岩手県大船渡市の有限会社三陸とれたて市場、宮城県南三陸町の株式会社ヤマウチ、上記の株式会社ささ圭と中村家)。これらのすべてが、地域復興への貢献を決意して再建に取り組んでいる。

「自分のために何かをしようというのは続かないんです。しかし、人のためにやろうということなら続く。厳しい状況のときほどこの法則は成り立つと思っていたんですが、それがこの震災からの再建の事例が証明してくれたと私は思います」と金太郎は力を込めて語る。

「先端技術や伝統技能など、特殊な能力を持っている会社でなくても再建は可能です。それよりも大事なのが使命感なんです。経営者に本気の使命感があれば、どんな苦境からも復活できるはずです。」

金太郎は、いったん間を置いてからこう続けた。

「震災復興における使命感の源泉は地域貢献ですが、その中でも最も大きな地域貢献は雇用創出ではないでしょうか。なぜならそれは相乗効果が大きいからです。雇用を創生することでモノが売れるようになり、企業がもうかるようになります。すると、また雇用が増え、モノが売れ、企業がもうかるという好循環が生まれます。こうなると加速度的に景気がよくなり、税収も増えます。」

だからこそ、自治体も雇用創生につながる話については、助言をはじめとする支援を怠らない。すぐにお金につながらないかもしれないが、自治体が応援してくれるようになれば、かなり強い企業になったと言えるのではないだろうか。

理想の中小企業のキーワード

「以上、事例から導き出した4つの成功要因と12のキーワードについてお話ししました。これらを分析したことで、“理想の中小企業像”が見えてきたと思います。」

いずみが最後のスライド、“理想の中小企業像”を映し出す(図2)。

図2

図2 理想の中小企業像

真ん中の五角形が自社である。使命感を持ち、商品・サービスの高付加価値化に努め、それらのよさを伝えるための販売努力を怠らない会社を目指す。

周囲の楕円形は、重要関係者である。公共団体や金融機関に「社会貢献とやる気」を提示し、支援や融資を受ける。

地域や社会全体に対しては、「相互支援・応援・仲間意識・貢献・雇用創出」などを考えながら、会社とのよい関係を作っていく。

顧客や取引先に対しても、絆や共感を大切にし、応援し合う関係を作っていく。その手段として、インターネットや流通機構を上手に利用していく。

これから重要になっていくのは海外だ。市場拡大という意味だけではなく、異文化に触れるという意味でも重要であり、海外ニーズに積極的に対応していくことで、日本での事業だけでは得られない、新しい戦略を自社に取り入れていくことが可能になる。

「本当はどういう企業が強いのかは、逆境というステージがないとなかなか分からないことです。東日本大震災という未曾有の災害から復興してきた人たちが、このことを教えてくれました。われわれは、この人たちにもっと感謝し、またその成果をきちんと共有していかなければなりません。すべてを失った方が再興を遂げています。まだまだ多くのものを持っているわれわれがうまくいかないわけがありません。お互いがんばっていきましょう。」

こう言い終えると、金太郎は参加者に向かって深々とおじぎをした。しばらく拍手が鳴り止まなかった。

まとめ

・逆境は顧客との関係を強化するチャンスになるが、顧客との関係を見直す余地がないかを普段から考えることこそ重要である

・販売努力の本質は、自社の商品やサービスのよさを知らしめることであり、インターネットや流通機構の活用はその手段である

・顧客に自社のよさを聞くのが営業力強化の第一歩であり、海外進出で新しいニーズを掘り起こすこともその一環と捉えることができる

・企業の再建や発展においては、使命感が最も大切である。自分のためにだと続かないことも人のためになら続けることができるからだ

・雇用の創出は、地域や社会への貢献の中でも最も相乗効果が大きいものであり、これに取り組む企業に対しては、公共団体も金融機関も応援してくれる

いずみの目

自分のためにだと続かないことが、人のためになら続けられるというのは、よく言われることですが、改めてそれが心に刻み込まれました。世のため人のためというのはきれいごとではなく、苦しい経営環境の中でモチベーションを保つための大きな原動力なんですね。
また、海外進出に関しては、市場が広がることが最大のメリットだと思ってきましたが、異文化に触れることで新たなニーズを知り、会社そのものが大きく変わるというメリットもあることにも気付きました。中小企業だからこそ、海外との関係を作ることが大事なのかもしれません。

海外拠点開設支援ソリューション

[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]

*この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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