TOP > コラム > ITコンサルタント美咲いずみが行く > 第68回 テレワークについて改めて考える(3)~人事・労務関連の見直し
コロナ禍で一段と普及が進んだテレワーク。とはいえ急に導入した企業が多く、さまざまな混乱が起こっているようです。厚生労働省が示している「新しい生活様式」の「働き方の新しいスタイル」に「テレワーク」が含まれていること、「働き方改革」も現在進行中であることなどから、テレワークの普及は今後も進むものと考えられます。 |
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YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、毎週月曜日のシステム部の部内会議に同席し、そのあと山田昭CIOとのコンサルティング・セッションの時間を持っている。
山田CIOの今回の依頼は、「コロナ禍に伴い急速にテレワークを導入したのだが、いったんしっかり見直したい、ついては重要なポイントをおさらいしたい」とのことだった。
そこでいずみはテレワークの定義を示し、つづいて標準的な導入手順を説明。さらにテレワークの主な課題とその解決策としてクラウド活用を説明したのだった。
「では、つづいて人事・労務管理の課題について見てまいりましょう」
山田CIOがリストに挙げていた課題は以下の4つだった。
■システム的な課題 1.労働契約や就業規則の見直しが必要 2.在宅勤務者の労働時間をしっかり管理したい 3.在宅勤務者の人事評価が不利にならないか不安 4.在宅勤務時に労災保険法が適用されるのか不安 |
「実は、これらについては厚生労働省がFAQを作ってくれています」
厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトに「テレワークの労務管理のQ&A」がある。
これを参考にそれぞれの対策を考えていこう。
1. 労働契約や就業規則の見直しが必要
テレワークの中で問題になるのは「在宅勤務」。就業規則に在宅勤務に関する記載が無ければ改めて明記し、企業と従業員の間で合意することが必要。なお、労働条件を変更する場合、従業員が人事制度や給与制度で不利益を被ることは許されない。
2. 在宅勤務者の労働時間をしっかり管理したい
管理方法は企業ごとに一任されているが、始業時・終業時にメールや電話で上長報告する企業が多い。クラウド勤怠管理システムを利用すれば、オフィス出社時もテレワーク勤務時も管理方法を変える必要が無い。
3. 在宅勤務者の人事評価が不利にならないか不安
厚生労働省によれば、週1、2日程度の在宅勤務であれば、従来通りの人事評価制度を適用している企業がほとんどだという。しかしながら、オフィスよりテレワークで働く時間の方が長い場合は、目標管理制度に基づく成果主義を適用すべき。いずれにしてもテレワーク勤務者の評価が他の従業員と比較して不利になってはいけないので、上長とテレワーク勤務者の間で一定期間ごとに業務内容とその成果について共通理解を深める。
4. 在宅勤務時に労災保険法が適用されるのか不安
テレワーク勤務者にも労災保険法が適用される。ただし、あくまで業務に基づく負傷や疾病に対するものであり、自宅内のベランダで洗濯物を取り込むときや、個人宛の郵便物を受け取るときに転んで怪我をしたなど私的行為が原因である場合は、業務上の災害とはならない。
「ありがとう。教えてもらったことを参考にして、人事担当役員に就業規則と人事評価制度の見直しを進言し、システム部としては同じく人事担当役員と相談しながらクラウド勤怠管理システムの導入を検討することにしよう。あとは従業員への周知を図って、不安を取り除くことだね」
「はい。それを提言しようと思っていました。さすがです!」
人事労務に関する業務として給与明細の処理がありますが、紙の明細の場合、印刷、仕分け~配布の業務が生じます。また、配布する側、受け取る側双方ともに出社する必要がありますので、テレワーク時にはモバイル端末に給与明細が配信されるサービスが有効と考えます。
[ITブレークスルー代表 森川 滋之 記]
* この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。
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